献血に頼らなくても「血小板(血液製剤)」の量産が可能に(depositphotos.com)
大学発のベンチャー企業のメガカリオン(京都市)と大塚製薬グループやシスメックスなどの製薬・化学関連企業15社は、体のあらゆる部分に分化する「iPS細胞(人工多能性幹細胞)」を使い、血液の成分である「血小板(血液製剤)」を量産する技術を世界で初めて確立したと発表した(「日本経済新聞」2017年8月7日)。
発表によれば、この血小板は、外科手術や交通事故のケガなどの止血に使われる。血小板の輸血は、国内で年間約80万人が受けている。しかし、長期間の冷蔵保存ができず(採血後4日間)、献血ドナーも不足。厚生労働省は、2027年に輸血用血液製剤の20%は、ドナー不足によって「延べ約85万人分が供給不能になる」と発表している。
だが、iPS細胞を使って血小板(血液製剤)を量産できれば、「献血」に頼らずに輸血ができるようになる。献血由来の血小板よりも大幅にコストダウンでき、無菌化によっておよそ2週間も保存できるので保管コストも低くなる。また、薬害エイズやC型肝炎の感染のように、ウイルスなどの病原体が混入するリスクもない。しかも、臓器などを他人のiPS細胞で作れば拒絶反応が起きるリスクがあるが、血小板なら各患者に応じてストックして使用できるため、拒絶反応を回避できる。
血小板(血液製剤)の安定供給が可能に
血小板の有望な市場性も逃せない。血小板の輸血は、日欧米で年間およそ500万回も行われ、国内の市場規模は薬価ベースで約700億円。米国は国内の3倍以上、世界なら4000億円以上の膨大な市場性がある。
血小板(血液製剤)をiPS細胞から製造する技術を持つメガカリオンは、臨床試験に必要な量産技術の研究を大塚製薬工場、日産化学工業、シスメックス、シミックホールディングス、佐竹化学機械工業、川澄化学工業、京都製作所など15社と連携して進め、来年にも臨床試験(治験)をスタートするという。
血液製剤の血小板は、国が定める「再生医療等製品」に該当し、条件付き承認などの早期承認制度が活用できることから、2020年に承認される見込みが強い。
ちなみにメガカリオンは、東京大学医科学研究所の中内啓光教授、京都大学iPS細胞研究所の江藤浩之教授らが開発したiPS細胞関連技術に基づいて、2011年に立ち上げたベンチャー企業。iPS細胞による血液製剤の製造と安定供給をめざしている。