シリーズ「再生医療の近未来」第6回

年間4万人が亡くなる心筋梗塞の再生医療――iPS細胞から「前駆細胞」を移植

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心疾患の死亡者は19万6723人、死因の15.5%を占める(shutterstock.com)

 1日に約10万回も収縮と拡張を繰り返しながら、ポンプのように全身に血液を送り出している心臓。冠動脈は、収縮したり、拡張したりする心臓の筋肉(心筋)に血液を休みなく送り込む血液循環の原動力だ。この冠動脈が動脈硬化などによって狭くなると、心筋に送り込む血液量が不足するため、胸の痛みや圧迫感を感じる狭心症を発症する。

 高血圧や高脂血症などが原因になって動脈硬化がさらに進むと、血管内にプラーク(脂肪などの固まり)が破れて血栓ができる。その結果、冠動脈が完全に詰まり、心筋に血液が行き届かなくなる心筋梗塞を引き起こす。

 心筋に血液が行き届かなければ、心筋は壊死(えし)、つまり細胞死する。壊死が大きくなると、心臓の収縮も拡張もができなくなるので、生命にかかわる危険な状態に陥る。

 狭心症も心筋梗塞も、冠動脈が狭くなったり、塞がったりして、心筋に血液が行き届かなくなることから、虚血性心疾患とか虚血性心臓病と呼ばれる。最近は、狭心症の中でも心筋梗塞に移行しやすい不安定狭心症といったり、心筋梗塞を合わせて急性冠症候群ともいう。

 厚生労働省「平成25年人口動態統計の概況」によると、心疾患の死亡者は19万6723人、死因の15.5%を占める。このうち、急性心筋梗塞が3万9956人(20.3%)、その他の虚血性疾患が3万4853人(17.7%)。性別では男性が9万1445人(13.9%)、女性が10万5278人(17.3%)。男女とも死因の第2位だ。

iPS細胞を用いた再生医療は?

 iPS細胞は、心筋細胞や内皮細胞などの細胞に分化する能力がある。この能力を用いてiPS細胞から分化させた心筋細胞や心筋細胞になる能力をもつ前駆細胞を患者に移植し、心筋梗塞に罹った心機能を回復させる研究が進んでいる。

 細胞移植は、どのように心機能を回復させるのか? 移植細胞が心筋細胞として元気に働けるようになったり、移植細胞がサイトカインという伝達物質を分泌し、心臓の組織の修復や血管の新生を促したりして、心機能を回復させる。現在、より効率よく安全なiPS細胞を用いた心筋再生移植治療の研究が国内外で取り組まれている。

 iPS細胞を用いた心筋再生移植治療は、どんな状況なのか?

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