インタビュー 進行がんは「免疫」で治す 第2回 昭和大学教授 角田卓也

「がん免疫療法」で副作用や死亡事例!? ステージ4も完治できる<武器>を使うには

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がん免疫療法も副作用があるから効く?

 免疫チェックポイント阻害薬の場合も、当初はがん細胞そのものではなく、免疫システムに働きかけるため、抗がん剤のような副作用はないと考えられていた。

 だが、角田教授は、「一般の人は、がん免疫療法といえば、副作用の少ない安全なものと思われがちですが、効果があるものには副作用が伴います」と、免疫チェックポイント阻害薬にも副作用があると説明する。

 実際に2016年7月、日本臨床腫瘍学会が「適切な医療機関・医師のもと、適切な投与量・投与方法で受けてほしい」と患者向けの注意喚起の文書が公表された。
 
 異例の発表に至ったのは、重篤な副作用が6例、死亡に至ったケースが1例報告され、副作用に対応できない大きな問題が起きたためである。これまでに、間質性肺疾患や肝機能障害、甲状腺機能障害、重症筋無力症、1型糖尿病などの副作用が報告されている。

 「免疫チェックポイント阻害薬は、抑えていた免疫のブレーキを外すため、頻度は低いですが免疫が必要以上に活性化して<暴走する>ケースがあります。これまでの治療では起きなかった自己免疫疾患に注意する必要があるのです」(角田教授)

 「免疫チェックポイント阻害薬は、ステージ4のがんでも完治できる可能性を秘める反面、副作用も強いのですが、従来の抗がん剤の副作用と比較すると明らかに頻度・程度が低いのです」(角田教授)

 では、がんを完治させる可能性を持つ免疫療法をどう考えていくべきか――。

 角田教授は、「強力な武器には、必ずメリットとデメリットがある。状況に応じて効果的な武器を賢く使ってこそ<有利な戦い>ができます」として、こう締めくくった。

 「問題視されている副作用は、治療を行う医師側も新しい薬剤に使い慣れていない点にあります。今後、副作用への対処法を身につけていけば、免疫チェックポイント阻害薬の優位性を正当に評価できるようになるはずです」


【お知らせ】
8月26日、角田卓也教授による「最先端のがん免疫療法-がん;死に至る病から慢性的疾患へ-」と題した講演が行われる。また、和歌山県立医科大学外科学第2講座講師の勝田将裕医師による「日本初、膵臓がんに対する細胞療法の治験」も行われる。

●講演概要
「日本初、膵臓がんに対する細胞療法の治験」
日時:8月26日(土)午後2時30分~4時30分(午後2時より受付開始)
主催:一般社団法人 市民のためのがんペプチドワクチンの会
場所:モバフ新宿アイランド 新宿アイランドタワー20階(東京都新宿区西新宿6-5-1 電話番号03-6759-8939)
アクセス:東京メトロ丸の内線「西新宿駅」より30秒、JR線・京王線・小田急線「新宿駅」西口改札口より新宿副都心方面約徒歩8分。
参加は無料。定員100名(定員になり次第締め切り。aida@ccpvc.orgにお申込み下さい。

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角田卓也(つのだ・たくや) 昭和大学臨床薬理研究所臨床免疫腫瘍学講座教授。和歌山県立医科大学卒業後、同病院で研修。1993年、腫瘍浸潤リンパ球の研究をテーマに医学博士号を取得。92~95年、米ロサンゼルス、シティオブホープがん研究所に留学。同講師就任。95年、和歌山県立医科大学第2外科助教就任。日本初の樹状細胞療法を実施。2000年、東京大学医科学研究所講師、05年、同准教授就任。10年、バイオベンチャー社長に就任。日本初の大規模がんワクチンの臨床試験を行う。2016年5月より現職。30年間一貫してがん免疫療法を研究する。

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