インタビュー「がんでも妊娠をあきらめない・卵巣凍結」前編・京野廣一医師

「がん」になっても妊娠・出産をあきらめたくない女性のための「卵巣凍結」とは?

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卵巣凍結が向いている疾病、向いていない疾病とは

――乳がんの治療での妊孕性の温存という話をよく聞きますが、がんの種類によって、卵巣凍結が向いているものとそうでないものがあるのでしょうか?

京野:一般的には乳がんの治療における妊孕性の温存がよく話題になりますが、必ずしもそうとも言えません。乳がんは年間約9万人の方が罹患します。その中で40歳未満の方は5%しかいません。この4500人の方のうち、ネオアジュバント(術前補助化学療法)をしなくてはいけない方は200人くらい。ですから、乳がんにおいて卵巣凍結の適用になる方はとても少ないというのがまずあります。

 また、乳がんは診断をしてから化学療法をするまでの期間が8週くらいあります。2週間あれば採卵できますので、卵子もしくは受精卵の凍結ができます。また、乳がんは卵巣に転移する確率が高いために、乳がんの場合は卵巣凍結よりも卵子凍結、受精卵凍結の方が理想的です。

――では「卵巣凍結が向いているがん」もあるのでしょうか。

京野:悪性リンパ腫や小児がんですね。また、白血病は卵巣への転移のリスクが高いと言われていましたが、最近の研究では化学療法をある程度行ったあとなら転移のリスクが低くなるという論文がいくつか出ており、イスラエルでは白血病の患者の方が卵巣凍結してその後妊娠、出産に至ったというケースもあります。

 海外の研究では、重症子宮内膜症や全身性エリテマトーデス(SLE)などの良性の疾患での成果もあり、今後の研究次第で、卵巣凍結の適用の範囲は変わっていくでしょう。

――現時点では卵巣凍結が適用される患者の数は、大体国内で年間にどのくらいいるのでしょうか?

京野:結婚する年齢などにもよりますが、一般的に2年以内には8割程度は妊娠されます。残りの2割ぐらいの方が不妊治療に入ってきます。その中でタイミング法や薬物療法なども行い、さらに人工授精、体外受精などの治療法が選択されます。卵巣凍結が適用となるのは現時点ですと、年間で多くても400人くらいでしょう。

 ただ、治療の選択肢としてあるということをもっと知っていただきたいと思いますし、産婦人科や腫瘍内科、小児科の先生などともっと連携していければと考えています。
(取材・文=石徹白 未亜)

京野廣一(きょうの・こういち)
福島県立医科大学卒、東北大学医学部産科婦人科学教室入局し、1983年、チームの一員として日本初の体外受精による妊娠出産に成功。1995年7月にレディースクリニック京野(大崎市)、2007年3月に京野アートクリニック(仙台市)、2012年10月に京野アートクリニック高輪(東京都港区)を開院。

日本産科婦人科学会 専門医、母体保護法指定医師、日本生殖医学会生殖医療専門医
東邦大学医学部産科婦人科学客員教授、日本IVF学会顧問、日本生殖医療心理カウンセリング学会顧問、日本不妊カウンセリング学会評議員など

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