血流を促進するビタミンB12、慢性痛に抗うつ薬も有効
脊柱管狭窄症の薬物療法では、血流をよくするために「筋弛緩薬」をはじめ傷んだ神経の働きを調整する「末梢循環障害改善薬」、「NSAIDS(非ステロイド性抗炎症薬)」や「アセトアミノフェン」などの「鎮痛剤」などが用いられる。また、症状に合わせて神経を修復させる「ビタミンB12製剤」や「抗うつ薬」もよく併用される。
ビタミンB12製剤(メチコバール、ハイコバールなど)は、細胞の分裂に欠かせない核酸や葉酸の合成、血液中の酸素を運ぶヘモグロビンの生成に深く関わることから、血液中の赤血球の産出、末梢神経の修復、神経作用の安定、痛み・痺れ・腰痛・眼精疲労の改善、運動失調の回復、貧血・めまい・耳鳴りの緩和、睡眠リズムの正常化など、多くの薬理作用がある。
一方、抗うつ薬は、抑うつ気分の持続、希死念慮を特徴とする気分障害(MD)や不安障害を抑制するが、特に慢性疼痛、月経困難症などへの適応外使用が行われる場合がある。慢性的な痛み・痺れによってうつ状態に陥った患者は、痛みへの感受性が強いため、痛みを顕著に改善する抗うつ薬を処方する場合が少なくない。
主な抗うつ薬は、セロトニントランスポーター(セロトニンの量を調節する器官)に作用し、神経細胞と神経細胞の間で脳内神経伝達物質のセロトニンの量を調整するSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、セロトニンとノルアドレナリンの両方の調整を行うSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、NaSSA(ノルアドレナリン作動性、特異的セロトニン作動性抗うつ薬)の他、三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬などがある(日本うつ病学会治療ガイドライン II.うつ病(DSM-5)/ 大うつ病性障害 2016年7月31日)。
(監修協力=脊柱管狭窄症ひろば)
久野木順一(くのき・じゅんいち)
日本赤十字社医療センター脊椎整形外科部長・脊椎センター長(副院長 整形外科センター長 医療技術部長)
1978年、金沢大学医学部卒業後、東京大学医学部整形外科学教室に入局
1986年、日本赤十字社医療センター整形外科に勤務
1994年、米国整形外科学会Traveling Fellowとして渡米
1997年、日本赤十字社医療センターリハビリテーション科部長
2006年より、現職
日本整形外科学会会員、国際腰椎学会会員、日本脊椎脊髄病学会評議員、日本腰痛学会評議員などを兼任