フランスでは「痩せすぎモデル」を規制
今回の研究を率いた英リバプール大学のEric Robinson氏は、次のように主張する。
「過度に痩せている女性の身体をディスプレイすれば、現実的でない体型が理想だと思い込みやすくなる。これを阻止する方策を社会的に講じるべきだ」
「若者のボディイメージ障害や摂食障害の比率は懸念すべき高さだ。マネキンの寸法の変更は、子どもや思春期の若者、若い女性に特に有益だろう」
一方、世界的なファッションの発信地であるフランスでも、以前からこの問題がクロースアップされている。
つい先日、若者を摂食障害から守るための法規制が施行された。といっても、対象はマネキンではなく生身のファッションモデルだ。
パリAFPの報道によれば、5月6日に施行された新しい法律とは、フランス国内で活動するモデルに対して、BMIが標準値以内であり健康であることを証明する医師の診断書の提出を義務付けたものだ。
BMI値は18.5~24.9が標準範囲。18.5を切ると低体重となり、さまざまな健康問題を抱えやすい。
さらに今年10月には、モデルの身体または一部に修正を施した画像はその旨を記した注意書を必須とする法律も施行される。
たとえば、体型を細く修正した広告写真には、必ずその断りを入れよ――ということだ。
フランス保健省は、この法整備は特に痩せ過ぎのリスクが高いモデルたちの健康を守ることだけでなく、「達成しがたい美の観念の奨励を防ぎ、若い世代の拒食症を防ぐ」狙いもあると説明している。
こうした痩せ過ぎモデルの規制は、スペインやイスラエル、イタリアでも実施されている。
「健康美」の価値を高めることが必要
フランスでは、拒食症などの摂食障害は15~24歳の年齢層において、交通事故に続いて2番目に多い死因。
国内で約60万人もの若者が摂食障害に苦しんでおり、そのうち4万人が拒食症に悩まされているとされる。
また、米国神経性無食欲症・関連障害協会(ANAD)によれば、アメリカでは3000万人に何らかの摂食障害があると考えられている。精神疾患の中でも、摂食障害は死亡リスクが最も高いという。
日本でも健康的な体重がBMIで21〜22といわれているのに対し、マネキンのサイズは19程度を基準に作られている。
そして、女性の間で美しいと定評のあるモデルや女優には、BMI17〜18程度の人も少なくない。
摂食障害だけでなく、低体重児の出生や老後の要介護が増える傾向にあるなど、「女性の痩せすぎ問題」は深刻度を増している。
今後は日本でも海外と同様に、国とファッション業界が協力体制を作り「健康的な本物の美しさ」の価値を高める取り組みが必要ではないだろうか。
(文=編集部)