フランスではやせ過ぎモデルを禁止!
太ももの間にスキマができる細い脚を「サイギャップ」、ビキニとおなかの間に隙間ができるのを「ビキニブリッジ」――。これが10代~20代女性のあこがれとなっているのをご存じだろうか。
「サイギャップ」「ビキニブリッジ」をネット検索すると、スリムな美しさを強調する画像が山ほど出てくる。もちろん、こうした過度の細さを求めて無理なダイエットを繰り返せば、摂食障害になったり健康に多大な悪影響を及ぼしたりする。自分のスタイルに満足できず、醜悪だと恥じて自尊心を傷つけ自己嫌悪に陥ることにつながる。
やせ過ぎのモデルはダメ! とフランス議会で審議
先ごろ、「パリコレクション」を擁するファッションの中心地フランスで、スリム過ぎる美しさを求める風潮に歯止めをかけようとする動きがあった。フランス議会で、ファッションモデルの過激なスリムさを規制する法案が審議されているのだ。
提出された法案によると、モデル本人のBMI値[体重kg÷(身長m×身長m)]が18以上であることを証明する診断書の取得などを、モデルを雇う業者に義務づける内容だ。違反者には罰金や禁錮刑が科せられる。一方、無理なダイエットを奨励し、やせ細った体の画像を投稿させるようなウェブサイトも規制するとしている。
この法案が審議されている背景には、2006年にブラジル人ファッションモデルのアナ・カロリナ・レストンが拒食症によって死亡し、これを契機に欧米諸国でやせ過ぎ問題に関する議論が過熱したというものがある。
イタリア、スペイン、イスラエルなどではすでに、やせ過ぎのモデルを禁止する法律が成立している。「ミラノコレクション」開催地のイタリアでは、16歳以下のモデル、BMI18以下のモデルは出演が禁止されている。
イスラエルでは、モデルの写真を加工した場合はその事実を明記することが義務付けられている。また、アメリカやイギリスは法での規制はないが、啓蒙という形で政府がこの問題に取り組んでいる。
当然のことながら、ファッション業界はモデル事務所などを先頭に、こうしたスリム規制の動きに声を上げて反発している。ファッションの帝王といわれるデザイナーのカール・ラガーフェルドは、「太った女性が細いモデルは醜いと文句を言っているだけ。ファッションは夢と幻想の世界であり、丸々と太った女性を誰が見たいものか」とコメントしている。
ちなみに、フランス人女性のBMIの平均は23,2。ヨーロッパ諸国の中では低い方である(仏国立人口統計学研究所2009年調査、WHOが定めるBMIの標準値は22)。また、肥満比率(BMI30以上の人口比率)をみても、フラン人女性は13.4%で、アメリカ(36.3%)、イギリス(26.1%)と比べても低い(OECD Health Data 2012)だ。
同データによれば、日本人女性は最低クラスの3.2%でやせ過ぎの部類に入る。法案を提出した医師のオリビエ・ベラン議員は、「フランスでは10代女性を中心に3~4万人が摂食障害を抱えている」と言う。この数値でいけば、日本も政府が対策をとるレベルに達している。
今年のファッショントレンド、アメリカは「ぽっちゃり」?
一方、「肥満大国」アメリカでも、「サイギャップ」「ビキニブリッジ」に対抗する動きがある。有名スポーツ誌『スポーツイラストレイテッド』が、2015年水着特集のモデルに、初めて12号サイズのロビン・ローリーを起用して話題となった。
ファッション業界では、8号サイズでさえ大柄扱いされかねない。ごく僅かなモデルが美の基準となる風潮に対し、「NO」と宣言するプラスサイズのモデル起用には、現実に少し近づいたと評価する声もある。
本来、美の基準は時代や社会、文化によって、またそれを見る人間によってもさまざまなはず。ファッション業界やメディアが発信する美の情報も、多様であるべきだ。いつの世でも、自分なりの価値基準で健康的な美しさを求めたいものだ。
(文=編集部)