「BMI値」の「一般体重」も全ての人種にあてはまるわけではない!?(depositphotos.com)
海外土産として服を購入する際、「欧米人のMサイズ」と「日本人のMサイズ」は、かなり違うので要注意――これは「試着・返品自由」なネット通販全盛の現況下になっても変わらない、世間の常識だ。
今回ご紹介する「人種差」に関する最新の知見を一読して、そんなことを連想したのだが、若干、何を今さら感が拭えなくもなく……。
米国予防医学専門委員会(U.S. Preventive Services Task Force:USPSTF)は従来から、糖尿病や心疾患のスクリーニング(選別)には「過体重/肥満」を主な基準とするよう推奨してきた。
ところが、この指針に従った場合、「人種的・民族的少数派に属し、これらの疾患リスクが高い人々が見落とされる可能性が否めないだろう」と警告を示唆する研究発表が登場した。
4月4日付の『Annals of Internal Medicine』(オンライン版)に掲載された件の報告は、米国・アトランタにあるエモリ―大学とカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の共同研究班の検討によって浮き彫りにされた。
その要点は、南アジア系やヒスパニック系の米国人の場合、白人に比べて糖尿病や心疾患・脳卒中のリスクが高く、これらの疾患リスクには「人種差」が認められるというものだ。
BMI値も再考が必要になる?
今回の研究は、5つの人種に区分けできる計7617人の被験者(45~84歳)を対象として実施された。その内訳は、南アジア系(インド、パキスタン、ネパール、スリランカなど)と中国系がそれぞれ803人であり、白人系が2622人、黒人系が1893人、ヒスパニック系が1496人を占めていた。
研究に際し共同チームが着目したのは、「BMI値」の名称で知られる体格指数(ボディ・マス・インデックス)。身長と体重に基づく体脂肪のおおよその推定値だ。その計算方法は以下の通りだ。
●BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
【例1】体重68kg/身長165cmの場合、BMI値は25
【例2】体重68kg/身長が同上の場合、BMI値は19.6
米国疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)では、このBMI値が「18.5以上/25未満」を「一般体重(普通体重とも)」としている。
しかし、今回の研究陣は、詳細な分析結果の根拠に基づき、南アジア系と中国系の被験者については「18.5以上/22.9未満」を「一般体重」と定義しなおしている。
また、非白人層に属する被験者の場合、BMI値がたとえ低かったとしても「心血管代謝異常」が認められる可能性が示唆された。
平等性から年齢や性などを補正した解析によれば、BMI値が25の白人と「心血管代謝異常の有病率」が同程度と認められた例は、南アジア系や中国系の被験層ではBMI値が「19.6以上/20.9未満」の人々であったそうだ。
さらに共同研究班は、①高血圧、②高血糖、③HDL(善玉)コレステロール低値、④トリグリセライド(TG=中性脂肪)高値の4つのリスク因子にも着目。
各被験者の保有状況を調べ、これら4つのうち2つ以上のリスク因子を持つ人の場合を、心疾患または糖尿病に関連する心血管代謝異常が「有り」と見なして定義した。