リスク因子にも顕著な「人種差」が
その結果、適正体重同士間の比較においても、次のような顕著な「人種差」が浮き彫りになった。
具体的には、白人層に比べて「心血管代謝異常」の有病率が、南アジア系では約2倍にものぼり、次いでヒスパニック系が約80%高く、黒人層や中国系では約50%高いという傾向が明らかになった。
報告の筆頭著者であるUnjal Gujral氏(エモリ―大学・博士研究員)は、こう補足する。「今回の知見でみられた人種差は、人口動態や地理的な条件、健康への意識や行動、体脂肪などの違いによっても説明できなかった」。
そして、今回の研究を指導した立場から、UCSF教授のAlka Kanaya氏は、論文のなかで次のように述べている。
「人種的/民族的少数派の場合、その特性自体が心血管代謝に影響を及ぼすリスク因子である可能性が示唆された。その点について患者自身はもちろんのこと、医療従事者がもっと目を向けるべきであり、今回の成果がその契機になるものと期待している」
一方、日本人を含む東アジア系民族の場合、インスリン感受性は良好なのだが、インスリン分泌能は低い傾向がある――。北里大学や他国大学の共同研究による、そんな報告が発表されたのは3年半ほど前のこと。
とりわけ日本人は一般体重をわずかにオーバーしただけでもインスリン感受性が低下し、2型糖尿病発症のリスクが上昇するというものだった。
なにやら素人実感では、「そんな『人種差』が判明したのもつい最近のことなの!?」とか思えなくもないが、その微妙にして曖昧な難儀性こそが「心血管代謝異常」の厄介な正体なのだろう。
(文=編集部)