中村祐輔のシカゴ便り12

2016年度に米FDAが新規薬剤22品目を承認、一方で如何ともしがたい日本の新薬開発

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新薬開発での日米格差は広がる一方(depositphotos.com)

 2106年度に承認を受けた新規薬剤のリストを下記にまとめた。ニボルマブ(抗PD-1抗体)などの適応拡大(2017年2月2日には膀胱がんに対して承認された)は進んでいるが、これらの適応拡大されたものはこのリストには含まれていない。

 全く新規の薬剤としては、2016年度に22品目が承認されている。(黄色で示したものは抗腫瘍薬)

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2016年にアメリカで承認を受けた新薬一覧

 がんに対しては、新たに4品目であり、免疫チックポイント阻害剤として3種類目のPD-L1抗体が含まれている。これも、他のがん種への適応拡大が進むのが確実だ。これ以外にも、PDGFR(血小板増殖因子受容体)に対する抗体医薬品が軟部腫瘍に対して承認を受けている。

 あとの2品目は、分子標的治療薬で、PARP阻害剤は乳がんや前立腺がんにも広がっていくだろう。

 クロストリジウム・ディフィシル菌感染症は抗生物質などを多用しすぎて、普段腸管内にいる細菌が殺された結果起こることが多い。下痢などの症状が起こるが、医師がこの病気のことを知らないと単なる腸炎として治療を続けるため、症状が改善しない。

 人間の体は、消化管に存在する多様なバクテリアと仲良く付き合っていかなければいけないのだ。米国の現状を見ていると、多様性の価値が過小評価されているように思えてならない。

 しかし、このリストを見ると、感染症、免疫疾患、筋変性疾患まで多くの領域で画期的な新薬が開発されているのがよくわかる。それにしても、このブログでも綴っているように、医薬品開発に関する日米の差は如何ともしがたいものがある。

中村祐輔(なかむら・ゆうすけ)

がん研究会がんプレシジョン医療研究センター所長。1977年、大阪大学医学部卒業。大阪大学医学部付属病院外科ならびに関連施設での外科勤務を経て、84〜89年、ユタ大学ハワードヒューズ研究所研究員、医学部人類遺伝学教室助教授。89〜94年、(財)癌研究会癌研究所生化学部長。94年、東京大学医科学研究所分子病態研究施設教授。95〜2011年、同研究所ヒトゲノム解析センター長。2005〜2010年、理化学研究所ゲノム医科学研究センター長(併任)。2011年、内閣官房参与内閣官房医療イノベーション推進室長、2012年4月〜2018年6月、シカゴ大学医学部内科・外科教授兼個別化医療センター副センター長を経て、2016年10月20より現職。2018年4月 内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)プログラムディレクターも務める。

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