特定外来生物の飼育、輸入などで懲役1年以下または100万円以下の厳罰
交雑種の駆除の根拠となった外来生物法とは何だろう?
環境省によれば「外来生物法の目的は、特定外来生物による生態系、人の生命・身体、農林水産業への被害を防止し、生物の多様性の確保、人の生命・身体の保護、農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、国民生活の安定向上に資すること」としている。
そのために、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼす海外起源の外来生物を特定外来生物として指定し、その飼育、栽培、保管、運搬、輸入を規制し、防除(殺処分)が行われる。
外来生物法に違反するとどうなるのか?
たとえば、販売、頒布する目的で、飼育したり、野外に放った場合、個人なら懲役3年以下または300万円以下の罰金、法人なら1億円以下の罰金に科せられる。また、販売、頒布以外の目的で、飼育・譲渡したり、無許可で輸入した場合、個人なら懲役1年以下または100万円以下の罰金、法人なら5000万円以下に科せられる。
人間が作った法律が生物の生命を奪っている事実は変わらない
さて、ニホンザルもアカゲザルも、哺乳綱サル目(霊長目)オナガザル科マカク属だ。ニホンザルはアカゲザルと最も近縁種であることから、アカゲザルと共通のDNA型を示しやすい。
マカク属は、陰茎亀頭の形態などからアカゲザル、カニクイザル、タイワンザルに分かれる。ニホンザルと最も近縁種のアカゲザルは、およそ50万年前に分化したと推定される。
高宕山自然動物園によると、ニホンザルのDNA鑑定は初めての試みだったが、今後も実施されるかは未定だ。
環境省によれば、交雑種の分布情報の取りまとめ、群れの行動域調査、捕獲手法の検討、捕獲個体の交雑検査、新規マーカーなどの交雑判定手法、捕獲によらない判定手法、形態による判定手法の検討などに取り組んでいるという。
しかし、人間が作った法律が生物の生命を奪っている事実は変わらない。開発による生息地の破壊も、絶滅危惧種の増加も、哺乳綱サル目(霊長目)の殺処分も悲しく、重い難問だ。
(文=佐藤博)
佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。