生命誕生前の地球に隕石が衝突しDNAやRNAの素となる塩基が生成(shutterstock.com)
地球に生命が芽生えたのはいつか? なぜ生命のルーツが辿れるのか? その解明の手がかりになる、日本発の実験研究が世界を驚かせている。
2015年8月17日の欧州科学雑誌『Eart and Planetary Science Letters』によれば、東北大学理学研究科の古川善博助教授(地球化学)らの研究チームは、生命が誕生する前の地球に隕石が衝突した状態を再現する実験を行い、DNAやRNAの素となる塩基の生成に成功したと発表した。
隕石衝突を再現でDNAとRNAの核酸塩基とアミノ酸の生成に成功!
発表によると、古川助教授をはじめ、物質・材料研究機構の小林敬道主幹研究員、広島大学大学院理学研究科の関根利守教授らは、隕石に含まれる鉄やニッケルと、約40億年前の地球の海水に含まれていたと考えられる重炭酸、アンモニア、水などをステンレス製の円柱カプセル(高さ3cm、直径3cm)に封入、この容器に別のステンレス弾を秒速1km(時速3600km)の高速で衝突させ、瞬間的な超高温・超高圧の隕石落下を再現した。
その結果、DNAを構成する塩基のシトシンと、DNAの遺伝情報からタンパク質を合成するRNAの塩基のウラシルの生成を確認した。同時に、タンパク質を構成する20種類のアミノ酸のうち、9種類のアミノ酸も生成されていた。
つまり、この実験は、無機物からDNAやRNAの構成物質である核酸塩基(シトシンとウラシル)、タンパク質の構成物質であるアミノ酸が生成される事実を世界で初めて明らかにした。
DNAとRNAを構成する核酸塩基は5種類(アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシル)しかない。タンパク質を構成するアミノ酸も20種類だ。従来の研究によれば、無機物で構成された生命誕生前の地球で、核酸塩基やアミノ酸を生成するのは難しいとされていた。
したがって、これらの核酸塩基やアミノ酸は、生命誕生前の地球の遺伝物質の供給源になった可能性が高く、隕石衝突による生命起源説を裏づけるかもしれない。
古川助教授は「生命に必要なアミノ酸などの有機物は、宇宙からもたらされたとする仮説がある。だが、今回の実験は、 有機物がなくても隕石衝突によって生命の素になる物質が生じた可能性を示した。残りの3種類(アデニン、グアニン、チミン)の核酸塩基やアミノ酸が合成される条件をさらに調べたい」と、今回の研究成果が生命誕生の謎を解明する手がかりになると期待している。実験から1年余り、新たなニュースが飛び込んできそうな予感がする。