400匹以上のビーグルからヒトの親密性に関連が深い遺伝子が判明(shutterstock.com)
イヌとヒトの親密な友愛関係を裏づける先駆的な研究発表が先日あった。
「AFPBB News」(2016年9月30日)によれば、スウェーデンのリンショーピング大学のパース・イェンセン教授(動物行動学)らの研究グループは、イヌのゲノム解析を行ったところ、イヌとヒトの友愛関係を決定づけているのは、特定の遺伝子変異体である事実を明らかにした。
イヌとヒトの友愛関係を決定づける友愛遺伝子とは?
イェンセン教授らは、400匹以上のビーグルがヒトの助けをどの程度求めるのかを調べるために、餌の入った容器の固く閉じられた蓋を開けるという、自力では解決できない課題をイヌに与え、イヌが部屋の中にいるヒトに助けを求めるかどうかを観察した。
続いて、遺伝子型を特定するGWAS(ゲノムワイド関連解析)を用いて、ビーグルのDNA(塩基配列)を調べ、実験による行動結果と特定の遺伝子変異体の相関性を包括的に分析した。
その結果、ヒトの助けを求める傾向が強いイヌが持っている5種の遺伝子変異体は、ヒトの社交性や親密性に関連が深い遺伝子とまったく同じだった。
特にSEZ6L遺伝子は、ヒトの近くで過ごす時間や直接的なコンタクトと密接な関連性が高かった。また、ARVCF遺伝子の2種のマーカーは、ヒトとの肉体的な接触を求める時間の長さとの関連性が確かめられた。また、メスはオスより高いスコアを記録したことから、イヌの性別も社会性に影響を与えている事実も判明した。
このように、人間に親しみを持つイヌの行動と5種の遺伝子変異体との間には、明らかな関連性がある事実が明確になった。発見された社交性や親密性を司る4種の遺伝子変異体は、自閉症やADHD(注意欠陥・多動性障害)などにも深く関わっている遺伝子とされている。
イェンセン教授は「イヌとヒトの行動様式は、共通の遺伝子変異体が制御している。ヒトに馴化した最初のオオカミもイヌと同じ遺伝子変異体を持っていたと考えられるので、オオカミのゲノム解析を急いでいる。別の犬種でも確認できれば、イヌの行動から自閉症やADHDなどの障害の解明が進むだろう」と期待を込めている。
このように、イヌが家畜化するプロセスで、社会行動に大きな変化を生み出した遺伝子変異体が世界で初めて明らかにされたのだ。