なぜ、乳児は完全に均整のとれた成人になるのか?
論文の共著者の1人は、自信をこめて次のように述べている。
「今回の私たちの発見で、ヒトの身長に影響する遺伝要因のおそらく4分の1以上に説明がつく可能性が示唆されたと思う」
ヒトの身長は、そのほとんどが遺伝によって決まるということが過去の数多の研究からも明かされてきた。しかし、実際の「成長の過程」に関しては、今日でもさほど解明されていない。
つまり、身長50cmほどの乳児が、いったいどうやって完全に均整のとれた成人となるのか? あるいは、どうして一部の人は他の人に比べて数十cmも身長が高くなり差がうまれるのか?
この成長過程をめぐる難問こそ、生物学者にとってはたいへん魅惑的な主題ながらも、実際はあまり着手されていない領域だという。
10cm高くなると「がんリスク」が女性18%、男性11%アップ
一方では、500万人超のスウェーデン人男女を対象とした研究では、背が高い人ほど「がんリスクが高い」傾向も明らかにされている。この報告によれば、成人時の身長が10cm増えるごとに、女性ではがんリスクが18%、男性では11%高まることが判明したそうだ。
さらに長身の女性では乳がんの発症リスクが20%高まり、男女いずれも身長が10cm増えるに応じてメラノーマ(悪性黒色腫)のリスクが約30%上昇する可能性も判明している。
記事の冒頭部分では長身者の有意性を強調したが、いいことばかりはないのが人生だ。
ちなみにDeloukas氏らは、いつの日か、この知見を応用して「成長障害に対する個別化医療」が開発できるだろうと、希望的な観測を述べている。
(文=編集部)