連載「死の真実が〈生〉を処方する」第34回

診断書にまつわる数々の犯罪〜虚偽の記載・診断、偽造、改竄、隠匿、不正請求……

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
診断書にまつわる数々の犯罪〜虚偽の記載・診断、偽造、改竄、隠匿、不正請求……の画像1

死亡診断書・診断書の虚偽記載は立派な犯罪(depositphotos.com)

 医師が書く診断書に虚偽の記載があった場合、医師や医療機関は責任を問われます。先日来、診断書の虚偽記載をめぐるニュースが話題をよんでいます。

 2016年1月、60代の男性会社役員に性感染症と虚偽の診断をし、薬代名目で現金をだまし取った疑いで「新宿セントラルクリニック」(東京都新宿区)院長の林道也容疑者が逮捕されました。

 林容疑者は容疑を否認しているとのことですが、別の男性にも同様の虚偽の診断をし、治療薬を処方して現金約1万1000円を詐取した疑いで再逮捕されています。

 今回は、虚偽の記載をした場合の刑事責任について考えてみます。

大物政治家の自殺を隠して虚偽の診断書を発行

 昭和58(1983)年、自民党の中川一郎代議士が、北海道のホテルで亡くなりました。当初は「心臓病で急死」という報道でしたが、後に首吊り自殺であったことが判明。死亡を確認した医師は、「ある人から自殺であることを伏せてほしいと強く依頼され、虚偽の診断書を発行した」と聞いています。

 死亡診断書は、亡くなった原因を医学的に証明する文書です。この死亡診断書を記載できるのは医師のみ(特定の疾患に限っては歯科医師も可能)。したがって、たとえ強要されたなどの理由があっても、医師が虚偽記載をしたことになります。

 亡くなった例だけではありません。平成24(2012)年には、嘘の診断書を保険会社に提出し、保険金を騙し取ったとして、男ら3人が逮捕されました。

 これは、交通事故後に整骨院に通院していた男性が、通院期間を水増しして保険金を請求したとのこと。施術を行った整骨院の人物(柔道整復師だと思います)が、虚偽の診断書を記載。この整骨院経営者も逮捕されました。

 このように、医療に従事する者が診断書に虚偽の記載をすることは犯罪です。

一杉正仁(ひとすぎ・まさひと)

滋賀医科大学社会医学講座(法医学)教授、京都府立医科大学客員教授、東京都市大学客員教授。厚生労働省死体解剖資格認定医、日本法医学会指導医・認定医、専門は外因死の予防医学、交通外傷分析、血栓症突然死の病態解析。東京慈恵会医科大学卒業後、内科医として研修。東京慈恵会医科大学大学院医学研究科博士課程(社会医学系法医学)を修了。獨協医科大学法医学講座准教授などを経て現職。1999~2014年、警視庁嘱託警察医、栃木県警察本部嘱託警察医として、数多くの司法解剖や死因究明に携わる。日本交通科学学会(副会長)、日本法医学会、日本犯罪学会(ともに評議員)、日本バイオレオロジー学会(理事)、日本医学英語教育学会(副理事長)など。

一杉正仁の記事一覧

一杉正仁
がんになってもあきらめない妊活・卵巣凍結 費用は卵巣摘出に約60万円、保管は年間10万円
インタビュー「がんでも妊娠をあきらめない・卵巣凍結」後編・京野廣一医師

がん患者への抗がん剤による化学療法は妊孕性(妊娠のしやすさ)を低下させる。がんにより妊娠が難しくなる患者を支援するため、2016年4月に「医療法人社団レディースクリニック京野」が、治療前に卵巣を凍結して保存しておく「HOPE(日本卵巣組織凍結保存センター)」を設立すると発表した――。医療法人社団レディースクリニック京野理事長の京野廣一医師に卵巣凍結の仕組みについて訊いた。
前編『「がん」になっても妊娠・出産をあきらめたくない女性のための「卵巣凍結」とは?』

大阪市内のクリニック勤務。1987年 産業医科大…

吉田尚弘

小笠原クリニック札幌病院腎臓内科。日本中毒学会認…

横山隆

シカゴ大学医学部内科・外科教授兼個別化医療センタ…

中村祐輔