白骨死体から身元を探る(shutterstock.com)
検視に回される死体は、実にさまざまだ。犯行直後の生々しい死体もあれば、白骨死体もある。死体は、地上なら1年、水中なら2年、地中なら5〜8年で白骨化する。死後間もない死体なら身元確認もしやすい。白骨化した死体は、身元が割れにくい。だが、白骨化していても人体の形状を残していれば、性別、年齢、身長、血液型、DNA型などを突き止めて、身元確認できる。
性別を見分けるポイントは20カ所以上もある
頭蓋骨と骨盤を見ただけで、男女差が分かるのはなぜか?
まず、男性の頭蓋骨は女性より大きく、がっしりしている。かたや女性の頭蓋骨は男性より小さく華奢で丸みを帯びている。眉の上の部分の眉弓(びきゅう)は、男性は大きく発達しているが、女性は小さく未発達だ。目の上と前頭骨が接する部分の眼窩上縁(がんかじょうえん)は、男性は太く大きいが、女性は鋭く薄く小さい。耳の後ろの隆起した骨である乳様突起(にゅうようとっき)や下顎骨の頤(おとがい)は、男性は大きく発達しているが、女性は小さく華奢だ。
骨盤はどうか? 骨盤の形状は、男性は高さがあるハート形だが、女性は高さが低い横楕円型だ。骨盤の下部の恥骨下骨(ちこつかこつ)は、男性は逆V字型(60度)で狭いが、女性は逆U字型(90度)で広い。女性は出産するので、骨盤腔の幅が広くなっている。骨盤の下部の坐骨と恥骨に囲まれた閉鎖孔(へいさこう)は、男性は卵円型だが、女性は三角形だ。脊椎の下部、骨盤の上部にある仙骨は、男性は幅が狭く長いが、女性は幅が広く短い。骨盤の縁にある仙骨岬角(せんこつこうかく)は、男性は突出しているが、女性は突出が少ない。
このように頭蓋骨と骨盤の形状で性別を見分けるポイントは20カ所以上もあるため、頭蓋骨と骨盤による性別識別率は高い。頭蓋骨なら約90%、骨盤ならほぼ100%。頭蓋骨と骨盤の形状や機能は、男女で生物学的な違いが顕著なので、判定が容易にできるのだ。
また、頭蓋骨のつなぎ目(縫合)を見れば、成人の年齢は分かるが、50歳を過ぎると特定が難しくなる。一方、成長途上の子どもや未成年なら、成長の度合によって、成人よりも細かく年齢を推定できる。たとえば、3歳の乳児なら、頭蓋泉門(ずがいせんもん)が埋まるので、1〜2年程度の精度の誤差で年齢を特定できる。