連載「病理医があかす、知っておきたい「医療のウラ側」」第17回

実態は<同意しないと進まない> インフォームド・コンセントは「納得した」に変えるべき

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インフォームド・コンセントは「言うはやすく、行なうはかたし」(shutterstock.com)

 「インフォームド・コンセント」や「インフォームド・チョイス」がもっとも進化している乳がん治療の現場では、乳がん告知のあと、生命予後や治療成績、その副作用・後遺症が説明されつつ、いくつかの「治療の選択肢」が提示される。

 そして、医師に「来週までに、ご自分で決めてきてください」と言われる。

 たしかにマニュアル通りなのだが、これでは知識に乏しい患者にとって、あまりに酷な要求である場合が少なくない。パニック状態に陥る患者さんがいても、ちっとも不思議ではない。

実態は、<よくわからないが同意しないと先に進まない>

 インフォームド・コンセントは「言うはやすく、行なうはかたし」が実態に近い。

 医療者側から見ると、説明文を準備した上で患者さんに医療の内容を説明して同意書にサインをもらえば(ICを確認すれば)一件落着。何か不都合があれば、その書類がそのときものをいう、といったところが実感・実態に近い。

 一方、患者さんにとって、インフォームド・コンセントに基づくインフォームド・チョイスは明白な「患者の権利」だ。とはいえ、多くの難解な医学用語を交えた説明を突然受けた患者さんは、「よろしいですね」もへったくれもない。

 「よくわからないけれど、同意書にサインをしないと先に進まない」と感じるのではなかろうか。

 多くの場合、この現実はどうしようもない。医学知識はとても広範かつ複雑で、ちょっとやそっと勉強したくらいで簡単にわかるようなしろものではない。圧倒的な医学知識の落差を埋めて、医師の言うことを100%理解することは、まず絶対に不可能! といってもいい過ぎではない。

 患者さんと直接お話しするとき、「もっとよく知りたかったら、ぜひ医学部に入学してください」と冗談を飛ばすことがある。

堤寛(つつみ・ゆたか)

藤田保健衛生大学医学部第一病理学教授。慶應義塾大学医学部卒、同大学大学院(病理系)修了。東海大学医学部に21年間在籍し、2001年から現職。「患者さんに顔のみえる病理医」をモットーに、病理の立場から積極的に情報を発信。患者会NPO法人ぴあサポートわかば会とともに、がん患者の自立を支援。趣味はオーボエ演奏、日本病理医フィルハーモニー(JPP)団長。著書に『病理医があかす タチのいいがん』(双葉社)、『病院でもらう病気で死ぬな』(角川新書)、『父たちの大東亜戦争』(幻冬舎ルネッサンス)、『完全病理学各論(全12巻)』(学際企画)など。

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