被害者と弁護団をつないだ<セカンドオピニオン>
一方、自覚症状はなかったものの、同クリニックに感染症の検査に立ち寄った40代のB氏は、新恋人への思いやりから自分が感染症になっていないことを確認するために検査すると、クラミジアと診断された。
約2カ月通院したにもかかわらず、完治しないと言われ、不審に思ったB氏は区内の別の泌尿器科医院で再検査を受けた。
また、30代のC氏は陰部に痒みや痛みを覚えて延べ1年間通院。だが、長期の治療に疑問を持ち、同じ医院で診断を受けた。2人ともクラミジアではないのに、長期間不要な処方を受けていた。
クリニックに通院していた大勢の患者が、同様のセカンドオピニオンを求めて、医院に流れてきた。セカンドオピニオンを担当した院長は不審に思い、医療問題弁護団に患者を紹介した。
医療問題弁護団の服部功志弁護士は、「医院からの紹介で7名の被害者の相談を受けたが、提訴まで踏み切れたのは2名だけ。話の途中で、泣き始めてしまった女性もいた」と訴訟までの難しさを語る。
容疑者は逮捕された2日後の1月19日、最高裁判所は林被告に75万8972円の支払いをC氏にするように求める確定判決を出した。B氏、C氏も容疑者を刑事告発している。また、容疑者を相手取り別の3人の被害者の集団訴訟も係争中である。
元来、セカンドオピニオンは<最善だと思える治療を選択するため>にある。しかし、今回のような詐欺診断・治療が発覚したきっかけはセカンドオピニオン。稀なケースながら、自身の身を守るのに有効な方法だといえる。
(取材・文=野島茂朗)
野島茂朗(のじま しげあき)
ジャーナリスト。週刊誌記者出身で、犯罪研究家や詐欺研究家などの肩書でコメンテーターとしてもメディアで活躍。