中村祐輔のシカゴ便り11

「膀胱がん」に「遺伝子治療」は効かない! 小倉智昭氏はダマされるな!

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小倉智明公式ブログ、OG's Diaryより

 今朝、ネットニュースを見ていたら、有名なアナウンサーが膀胱がんに罹患して、膀胱全摘手術を勧められたが、手術を拒否して遺伝子治療を受けているとあった。

 膀胱がんに遺伝子治療????これまでに米国で承認された例などないので驚いた。そこで「膀胱がん・遺伝子治療」をキーワードでネットを調べてみると、一番上位に「白衣を着た詐欺師」が現われた。

 ウエブページには下記の文面が出ていた。

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 2010年にデンドレオン社の治療用ワクチンが米国FDAで承認されたのは事実だが、「膀胱がん」ではなく、「前立腺がん」に対してである。

 この「前立腺がんワクチン」は前立腺に特異的な分子を利用しているので、理論的には膀胱がんには全く効くはずがない。

 まさに、詐欺師の詐欺師たるゆえんだ。言葉のすり替えなど、お構いなしだ。
 
 糖尿病治療薬のインスリンを、高血圧治療薬として利用しているようなものだ。アナウンサーがこの病院で治療を受けているのかどうかわからないが、膀胱がんの遺伝子治療など、私の知る限り承認を受けているもの、科学的に実証されているものはない。

 そして、メディアに登場する人が、無責任な発言をすると、他の患者さんにまで大きな影響を及ぼし、白衣を着た詐欺師の害をまき散らす。

 いったい、どのクリニックが、どのような科学的根拠に基づいて、自由診療としてこのような遺伝子治療を提供しているのか、ハッキリして欲しい。自分がどのような治療を受けようが、本人の自由だが、詐欺師の片棒を担ぐようなコメントは読んでいて腹立たしい。

 他の患者さんたちが、惑わされないように、どこで、どんな種類の治療を受けているのか、ハッキリさせるのが、アナウンサーとしての責任ではないのか!

※『中村祐輔のシカゴ便り』(http://yusukenakamura.hatenablog.com/)2016/1016 より転載

中村祐輔(なかむら・ゆうすけ)

がん研究会がんプレシジョン医療研究センター所長。1977年、大阪大学医学部卒業。大阪大学医学部付属病院外科ならびに関連施設での外科勤務を経て、84〜89年、ユタ大学ハワードヒューズ研究所研究員、医学部人類遺伝学教室助教授。89〜94年、(財)癌研究会癌研究所生化学部長。94年、東京大学医科学研究所分子病態研究施設教授。95〜2011年、同研究所ヒトゲノム解析センター長。2005〜2010年、理化学研究所ゲノム医科学研究センター長(併任)。2011年、内閣官房参与内閣官房医療イノベーション推進室長、2012年4月〜2018年6月、シカゴ大学医学部内科・外科教授兼個別化医療センター副センター長を経て、2016年10月20より現職。2018年4月 内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)プログラムディレクターも務める。

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