赤ちゃんの取り違えを防ぐのは「呼び名」!? Yayimages/PIXTA(ピクスタ)
血を分けた子か、育てた子か。血のつながった親か、育ててくれた親か――。赤ちゃんの取り違え事件は、映画やドラマの世界ばかりではない。
今年2月、フランス・カンヌの病院で20年以上前に女児を取り違えられたとして、2家族が病院を相手取り起こしていた訴訟で、病院側に200万ユーロ(約2億円)近い賠償の支払いが命じられた。
日本では2013年、新生児の取り違えで「人生が狂った」と訴えた被害者男性(60歳)に対し、東京地裁は病院に3800万円の支払いを命じた。被害者男性は、本来なら裕福な家で育つはずが、生活保護を受給するほど困窮した家庭で育ち、中学卒業後は働きながら定時制高校に通う生活を強いられたという。
同年には、「新生児取り違え」を題材にした映画『そして父になる』(2013年、是枝裕和監督)がヒット。主演の福山雅治が初の父親役を演じた同作が「第66回カンヌ国際映画祭」審査員賞も受賞し、そのテーマは社会的な注目を浴びた。
推測では全国で500件の取り違え事件が起こっていた!?
かつて、日本法医学学会の学会誌(1973年)には、大学教授らが全国調査した結果、「1957~1971年の間に32件の取り違えが起きていたことが分かった」と記載されている。
さらに当時、法医学の専門家は『報告は全体の5~10%だろう』と予測。日本全国で500件程度の取り違え事件が実際に起こっていたと推測されている。そのなかには、医療機関も当人も気が付いていない事例も含まれているといわれている。
医療事故のなかでも、「まさか起きるはずがない」と思われている「患者取り違え」。各医療機関でも、管理体制の見直しや職員への注意喚起などの防止策に努めてはいるが、いまだゼロには至らないのが現実だ。自ら名乗ることができない赤ちゃんは、当然そのリスクも高くなる。