どっこいしょ――。椅子に座るときや立ち上がるとき、重いモノを抱えたり、運んだりするとき、ついつい口から出てしまうこのかけ声。
無意識に出るかけ声は、重いモノを抱えるときの、ちょっとしたコツだ。今回は、「どっこいしょ」が医学的にどのような効果をもたらすのかを解説したい。
ぎっくり腰になったり、腰を痛めるケースで多いのは、無意識での動作の最中だ。これには、脳のメカニズムが関係している。
私たちは体を動かすとき、無意識に脳が「これから体を動かすぞ」という指令を出して準備をしている。
無意識の「準備」のアテが外れてぎっくり腰に
体が動く前に、関連する筋肉がその直前に反応して準備をしている。これを専門用語で「フィードフォワード制御」と呼ぶ。
たとえば、階段を降りていて、最後の一段があると思っていて実はなかったとき……。虚をつかれて「ガクッ」となって踏み外しそうになったことはないだろうか?
脳では「階段がもう一段ある」という無意識の「準備」をしていたところ、アテが外れてしまい体をうまく反応できず、踏み外しそうになってしまうのだ。
このことは、ぎっくり腰にも当てはまる。ぎっくり腰は、重いものを抱えすぎて発症するよりも、予期せぬ何気ない動作のなかに潜んでいることが多い。先ほどの「準備」が外れた状態だ。
我々が重いものを抱えるとき、持つときには、「よし、これから重いものを持つぞ」と、声には出さずとも脳内ではそのようにイメージしている。それに対応して脳が指令を出して、体にも準備をさせるのだ。