連載「救急医療24時。こんな患者さんがやってきた!」第6回

頭部打撲でERに搬送された患者が検査拒否で帰宅! 翌朝に再度搬入されて緊急手術!

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診察を拒否する患者に「本日はとりあえず連れて帰ります」と妻が……

 そこへ、患者の奥さんが警察からの連絡を受けて駆けつけてきた。ERドクターが来院してからの患者の状況を奥さんに説明した。奥さんは「酒に酔うといつもこうなのです」と頭を下げながら恐縮している。そして奥さんが患者(夫)に説得を始めた。

「お父さん、頭を打ってるんだから検査を受けてよ。先生も検査をせんといかんと言ってるでしょ」
「俺は頭なんか打っていない。俺は大丈夫、あの姉ちゃんの言うことなんか聞く必要なし」

 患者は全く聞く耳を持たない。ふたりの会話は全くの平行線である。患者は帰るつもりでERを出て行こうとしている。ERドクターもERナースも引き止めて検査を受けさせようとしたが、すればするほど患者の抵抗はひどくなった。どうしようもなくなった奥さんが、ERドクターに話しかけた。

「先生、すいません。こうなったらあの人は言うことを聞かないんですよ。皆さんにご迷惑をおかけしますので、本日はとりあえず連れて帰ります」
「そうですか、しかし、困りましたね。頭を打っているのに何の検査もしてないんですよ。もし、何かあったら大変ですしねぇ」
「いいですよ。何かあったら連れてきますから」
「わかりました。それでは頭部打撲の注意事項を書いた紙を渡しますので、何かあったら至急に連れてきてください」

 ERドクターもどうしたらいいのかわからないまま、成り行きでこのようになってしまった。はたしてこの対応で良かったのか?

急性アルコール中毒のみと診断して帰宅させ、翌日に外傷性頭蓋内出血

 急性アルコール中毒の患者が、歩行中や自転車で走行中に転倒して頭部を打撲することは珍しくない。急性アルコール中毒患者の最も懸念される問題点は、それに付随する、頭部打撲、頭蓋骨骨折や外傷性頭蓋内出血(脳挫傷、急性硬膜下血腫、急性硬膜外血腫など)である。発見が遅れて外傷性頭蓋内出血で死亡する患者もいる。

 ERでは、急性アルコール中毒の患者で頭部外傷がある、またはそれが疑われる場合には、必ず頭の検査(頭部単純レントゲン、頭部CT)を行わなければならない。単に急性アルコール中毒のみと診断して帰宅させ、翌日に意識レベルが低下して救急搬送され、外傷性頭蓋内出血であったということは珍しくないからだ。

 しかし今回は、頭の検査を行わなければならなかったにもかかわらず、このような状況で頭の検査を行わずに帰宅させることになってしまった。今後、何もなければ良いが、何かがあれば大変である……。

河野寛幸(こうの・ひろゆき)

福岡記念病院救急科部長。一般社団法人・福岡博多トレーニングセンター理事長。
愛媛県生まれ、1986年、愛媛大学医学部医学科卒。日本救急医学会専門医、日本脳神経外科学会専門医、臨床研修指導医。医学部卒業後、最初の約10年間は脳神経外科医、その後の約20年間は救急医(ER型救急医)として勤務し、「ER型救急システム」を構築する。1990年代後半からはBLS・ACLS(心肺停止・呼吸停止・不整脈・急性冠症候群・脳卒中の初期診療)の救急医学教育にも従事。2011年に一般社団法人・福岡博多トレーニングセンターを設立し理事長として現在に至る。主な著書に、『ニッポンER』(海拓舎)、『心肺停止と不整脈』(日経BP)、『ERで役立つ救急症候学』(CBR)などがある。

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河野寛幸
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