シリーズ「恐ろしい飲酒習慣」第3回

なぜ酒を飲むと酔っぱらうのか? アルコールが脳幹部や延髄にまで達すれば赤信号!

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アルコールが脳幹部や延髄まで達すれば赤信号!(shutterstock.com)

 酒を飲めば、どんな仕組みで酔っぱらうのか?

 上戸にとって、肝臓は強い味方にちがいない。だが、タフな肝臓もアルコールを分解する速度や量に限界がある。アルコール処理能力は、1時間当たり約5g。ビール中瓶約1本(アルコール量20g)を飲めば約4時間かかる。飲むピッチが速すぎたり、飲む量が多かったりすると、肝臓のアルコール処理能力がペースダウンするので、アルコールは血液を通って大脳に作用し、大脳を麻痺させる。これが酔いの正体だ。

 大脳(脳脊髄)には、血液脳関門(BBB/blood-brain barrier)という関所がある。血液脳関門は、中枢神経のホメオスタシス(恒常性)を守るために、血液から大脳(脳脊髄)に有害な化学物質や異物が侵入するのをブロックする防御システム。全長600kmもあるとされる脳内の血管壁を覆いつくしている内皮細胞の強固な大要塞だ。

 血液脳関門は、大脳のエネルギー源になるグルコース(ブドウ糖)は通すが、過酸化脂質のように有害な脂肪酸は通さない。脂肪酸のうち神経細胞の細胞膜に欠かせないDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)はブロックされる。

 さらに、分子量500以下のタンパク質や、脂溶性の高いアルコールをはじめ、カフェイン、ニコチン、抗うつ薬は、血液脳関門をフリーパスする。アルコールは、難攻不落の大脳(脳脊髄)のバリアーをやすやすとすり抜けてしまう。

海馬まで酔いが回ればブラックアウト(記憶喪失)の状態に

 アルコールは、まず呼吸や心拍数、血圧を牛耳る脳幹網様体を酔わせ、理性を司る大脳新皮質の働きを奪い取る。やがて本能や感情をコントロールする大脳辺縁系の活動を活発にするため、陽気になったり、気が大きくなったりする。気持ちを高揚させる神経伝達物質のドーパミン、緊張した心身を解きほぐす脳内物質のセロトニンも、追い討ちをかける。爽快、ほろ酔いから酩酊に向かう。

 息つく間もなくアルコールは、運動機能を調整する小脳に侵攻する。千鳥足になったり、立てなくなったり、呂律(ろれつ)が回らなくなったりする。泥酔に入る。

 記憶に関わる海馬まで酔いが回れば、ブラックアウト(記憶喪失)の状態に追い込まれる。生命維持に欠かせない脳幹部や呼吸中枢である延髄まで達すれば赤信号! 昏睡すると死に至るリスクが一気に強まる。一気飲みしたり、人に勧めたりなどは絶対に禁物! 厳に慎もう!

 「酒を飲むと死ぬ。しかし、酒を飲まなくとも死ぬ」――イギリスのパブ看板
(文=編集部)

参考:「おもしろサイエンス お酒の科学」(日刊工業新聞)、国立がん研究センターHP、e-ヘルスネットHP(厚労省)、「からだのしくみ辞典」(日本実業出版社)、「アルコールと健康NEWS&REPORTS」(アルコール健康医学協会)、独立行政法人 酒類総合研究所HPほか

難治性むちうち症からなぜ多くの不定愁訴がおきてしまうのか?
難治性のむちうち症を改善 後編 東京脳神経センター 整形外科・脊椎外科部長 川口浩医師

前編『画像診断できない難治性のむちうち症を独自の治療法で改善』

原因不明で治療法がなく多くの患者さんが回復をあきらめていた難治性のむちうち症。東京脳神経センターで進む独自の治療で、めまい、動機、吐き気などの全身症状やうつ症状などの不定愁訴が大幅に改善しているという。その具体的な成果についてお話を伺った。

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