ゲノ解析で医療イノベーションが(shutterstock.com)
GWAS(ゲノムワイド関連解析)など、ゲノム研究の成果を臨床に活かすゲノム医療。その先見的なムーブメントが医療現場に新風を送っている――。
GWASと最先端の診断技術のコラボ
たとえば「がん」。原発不明がん、希少がん、進行再発がんに「クリニカルシーケンス(がん関連遺伝子変異を解析し、最適な抗がん薬を調べる検査法)」による診断・治療がスタートした。自由診療で検査を提供する大学病院も増えているため、がん関連遺伝子変異に基づいた治療の成功例も少しずつ蓄積されている。
難病や希少疾患の領域では、診断がつかずに悩んでいた患者の遺伝子を解析・診断する未診断疾患イニシアチブ(IRUD)も日本医療研究開発機構(AMED)がリードして2015年に起ち上がった。全国規模の診断体制の構築をはじめ、原因遺伝子の特定、未診断疾患の臨床情報や遺伝情報のデータベース化も進められている。
IRUDのコンセプトは、マイクロアトリビューション。患者、家族はもちろん、医師、看護師、研究者、遺伝カウンセラーなどの医療スタッフ、医療に関わるすべての関係者の貢献力を評価する考え方だ。つまりIRUDは、参加するすべての関係者の密接な協力と連携が成功のカギになる。まさに先端医療のコラボレーション、それがゲノム医療なのだ。
AIの進化とともに広がり深まるゲノム医療の近未来
ゲノム医療は何を目指し、どこに向うのか?
2016年2月26日、「医療ビッグデータ・サミット2016」(日経デジタルヘルス主催)で、帝京大学医療情報システム研究センターの澤智博教授が登壇。ゲノム医療の近未来を指し示すエポックメイキングな講演を行った。
澤教授によれば、ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)を活用した先端医療を推進するトレンドは、「Precision Medicine」、「Learning Healthcare Systems」、「Patient-Generated Health Data」の3つのキーワードに集約される。澤教授は、特に「Precision Medicine(高精度医療)」の重要性を強調している。