がん細胞を濃縮して遺伝子解析〜患者のストレスが大きい「生体診断」を安全で迅速な「液体診断」へ

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高純度濃縮システムとは?

 このようながんの確定診断の課題を解決したのが、血液検査によってがん細胞(CTC)を遺伝子解析し、がんの早期発見や転移の発見につなげるリキッドバイオプシー(液体生検)の手法だ。

 ただ、がん細胞(CTC)は、血液10mL中に数個~数十個しか存在しないため、検出と遺伝子解析には3つのハードルがあった。①処理後のサンプル中に大量の血球細胞が残る、②特定のマーカーを持ったがん細胞(CTC)しか回収できない、③工程に時間がかかる。これらのハードルをクリアし、開発に成功したのが、高純度濃縮システムだ。

 高純度濃縮システムは、4つのステップからなる。①フィルタリングしたがん細胞(CTC)を免疫染色する→②細胞懸濁液中に残った白血球を磁気分離し、純化する→③純化した細胞を誘電泳動によってチャンバーに濃縮する→④濃縮した細胞を遺伝子解析装置によって遺伝子変異を解析する――。このステップを踏んで検証する。

 検証の結果、全血液中に、がん細胞(CTC)の遺伝子変異(EML4-ALK、EGFR、KRAS、PIK3CA)を検出できた。つまり、高純度濃縮システムは、不要な血球細胞だけを除去するので、さまざまなタイプのがん細胞(CTC)の遺伝子変異を解析できるだけでなく、表現型が変化したがん細胞(CTC)も解析できることが確かめられた。

 患者の負担が大きいバイオプシー(生体診断)から侵襲性の低いリキッドバイオプシー(液体診断)への可能性を大きくステップアップした高純度濃縮システム。

 患者の精神的・肉体的なストレスを緩和するとともに、医師が病態を正確・迅速に把握できるため、CT検査による画像診断と併用すれば、転移性がんの診断、薬剤耐性がんの経過観察、治療効果の早期判定の効率化に大いに貢献できるだろう。

 がんの確定診断の新たな道を切り拓いた高純度濃縮システムが秘めるポテンシャリティは大きい。
(文=編集部)

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