常に大切なのは「メメント・モリ(死ぬことを忘れるな)」という教え(shutterstock.com)
アリゾナ大学のコリン・ゼストコット教授とジェフ・グリーンバーグ教授らの心理学研究グループは、「人間は死を意識するとパフォーマンスがアップする」という研究成果をスポーツ心理学の学術誌『Journal of Sport and Exercise Psychology』(2016年11月8日)に発表した。
研究によれば、バスケットボールの試合前に「いずれは誰もが死を迎えること」をほのめかされた選手は、そうでない選手よりもシュートの成功率が高まり、多得点を稼いだ。死をほのめかされると、強いモチベーションが働くので、能力をより発揮できたのだ。
スポーツだけでなく、ビジネスや日常生活などのシーンでも応用できる可能性があるという。
死を意識するとパフォーマンスが一気にアップ
実験はどのように進められたのか?
研究チームは実験に先立ち、バスケットボールの選手を集め、ゼストコット教授と1対1の試合を2回続けた。1回目の試合後、被験者をランダムに2つに分け、アンケートを実施。半数は「試合の感想」を書かせ、半数は「自らの死についてどう考えているか」を書かせた。
その結果、「死に関するアンケートに答えた被験者」は、「試合の感想を答えた被験者」よりも、2回目の試合でのパフォーマンスが40%もアップしていた。一方、「試合の感想を答えた被験者」は、1回目と2回目の試合でパフォーマンスに特に変化はなかった。
2つ目の実験は、1分間にどれだけで多くのシュートが打てるかを競うゲームを実施。被験者はコイントスで2つのグループに分けられ、それぞれ30秒の個人指導とルールの説明を受けた。
半数は普通のT シャツの研究者が指導し、半数は「death」の文字と頭蓋骨をデザインしたTシャツを着た研究者が指導した。
その結果、「death」の文字と頭蓋骨をデザインしたTシャツを着た研究者に指導を受けた被験者は、別の研究者に指導を受けた被験者よりもシュートの成功率がおよそ30%も高かった。
ゼストコット教授は、「死をほのめかされると、その恐怖に対処する必要性が生じることから、ワークやチャレンジにより熱心に取り組むことが確認できた。さらに研究を重ねれば、死の恐怖を活用した新たなメソッドが開拓できるかもしれない」と期待している。