スポーツで勝つには「死の恐怖」をコントロール~「死を意識」すれば勝利できるを実証!

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「自分の価値観」と「強い自尊心」で死の恐怖はコントロールできる

 このような死のほのめかしによる激励の効果は、「恐怖管理理論(Terror Management Theory)」に基づいているとされる。簡潔に言えば、人間は文化的世界観と自尊心を盾に死の恐怖から身を守って生きているとする仮説――、それが恐怖管理理論だ。

 人間は、本能的な自己保存欲求が強いため、不可避的な死に恐怖を感じる。だが、文化的世界観(人生を生きる自分の存在理由と価値観)と、その価値観によって得られる強い自尊心があれば、死の恐怖はコントロールできると考えるのだ。

 自尊心は、自分をかけがえのない存在と自認する感情だ。自分に対する主観的な自己評価が高まるので、安定した心理状態が保たれる。高まれば高まるほど、自信が強まるため、積極的な行動が促され、社会適応力、問題解決力、目標達成力が強まる。

 人間は高度な自己認識と予測能力を併せ持つ動物だ。人間は社会共同体に秩序・永続性・安定性があることを認識し、思想的・宗教的・文化的な価値観を共有できることを予測できるので、死の不可避性を回避しようと努める。

 その帰結として、社会から認められる行動をとれば、賞賛や承認を受けるため、自分は重要で価値のある存在と感じる自尊心が自然と芽生える。それが恐怖管理理論を支える考え方だ。

 したがって、今回の研究は、自尊心が強まれば強まるほど、死の恐怖が弱められるため、選手は優れたアスリートになろうと奮闘する事実を改めて実証したことになる。

 セロトニンなどの神経伝達物質と、死の恐怖や自尊心との関係性の研究が深まれば、さらに興味ある知見が得られるにちがいない。

古今東西の先人たちの赤裸々な死生観

 光陰矢のごとし。生者必滅。生あるものは必ず死を迎える――。如何に生きるかを悩み、如何に死ぬかを考え、強かに生きる道を手探りするほかない。最後に、古今東西の先人たちの赤裸々な死生観、その生声を幾つか紹介しよう。

 「人が死ぬなんて思えない。ちょっとデパートに行くだけだ」――アンディ・ウォーホル

 「死の準備。それは、よい人生を送ることだ。よい人生は死の恐怖を和らげ、安らかな死を迎える。崇高な行いを貫いた人に死はない」――トルストイ

 「死は人生の終末ではない。生涯の完成だ」――マルティン・ルター

 「死は生の対極としてではなく、その一部として存在している」――村上春樹

 「日々生まれ変わるのに忙しくない人は、日々死ぬのに忙しい」――ボブ・ディラン

 「どう生きたかではない。どんな人生を夢見たかだ。夢は死んだ後も生き続ける」――ココ・シャネル

 「いつかは死ぬことを思い出せば、失うものなど何もない」――スティーブ・ジョブズ

 「毎晩眠りにつくたびに、私は死ぬ。そして翌朝目をさますとき、生まれ変わる。死ぬ覚悟があれば、自由に生きられる。明日死ぬかのように生きよ。永遠に生きるかのように学べ」――ガンジー

 「人の言うことなんて気にしちゃだめだよ。『こうすれば、ああ言われるだろう』。こんなくだらない感情のせいで、どれだけの人がやりたいこともできずに死んでいくのだろう」――ジョン・レノン

 「死んだ後も、生き続けたい」――アンネ・フランク

 偉人賢人の幾万言を重ねても、結論は1つではないか? ラテン語の警句に「メメント・モリ(memento mori)」がある。「死ぬことを忘れるな、今を楽しめ!」という気づきの教えだ。それは、よき人生にはよき死が待つという気づきでもある。
(文=編集部)

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