「ニキビ」に悩まされた人は「皮膚の老化」が遅い(shutterstock.com)
「青春のシンボル」ともいわれるニキビの正式名称は「尋常性ざ瘡(英:Acne vulgaris)」、りっぱな皮膚疾患のひとつである。
このニキビがやたらと描かれる有名な小説が芥川龍之介の『羅生門』。それは「若さ」や「良心」の象徴とも、「迷い」や「躊躇」の暗示とも、さまざまに解釈されてきた。
しかし、実際に自分が思春期だった頃、この皮膚疾患に大いに悩まされた向きには「未解決な人生課題」という解釈が最も腑に落ちるかもしれない。
どんなに親兄弟たちから「時期が来れば自然に治る」「気にすんな」と慰められても、青春まっ盛りの鏡に映るお肌の現実はそれくらい、当人には深刻だったはずだから……。
でも、そんなほろ苦い記憶も忘れるくらいの年月が流れ、今度は自分がニキビ青少年らを慰める立場の年齢になってみたら、「思わぬ朗報」が待っていた。
今回紹介する最新の知見は、そんなニキビOB&OGにとっては「歳月の贈り物」とも呼べるお肌の情報である。
皮膚の老化をめぐる明暗
なんでも思春期にニキビで悩んだ経験の持ち主は、ニキビがなかった人たちに比べて「皮膚の老化」がゆるやかである可能性が示唆されたというのだ。
いつかのニキビ青年たちが思わず喝采をおくりそうな話題の知見は、『Journal of Investigative Dermotology』(オンライン版9月28日付)で掲載された。
研究の音頭取りをしたのは英キングス・カレッジ・ロンドン双生児研究・遺伝免疫学部の皮膚科医、Simone Ribero氏。
同氏によれば、ニキビ経験者の皮膚が全くニキビのできなかった人の皮膚に比べて老化が遅いということ自体は、「長年、皮膚科医の間では知られてきた」知見なんだとか。
「ところが、われわれ臨床の場ではこうした所見が認められていたにもかかわらず、その原因自体はこれまで明らかにされてこなかったわけです」(Ribero氏)
前述のごとく、同氏の職業は双生児研究者にして遺伝免疫学部の皮膚科医である。そんな専門分野の立場から、今回の相関研究でも1200組を超える双生児たちが対象に選ばれ、そのうちの4分の1に相当する被験者が、生涯のいずれかの時点で、ニキビに悩まされてきたOB&OGだった。