冤罪が晴れたアカイエカ(shutterstock.com)
深刻な先天性障害をもたらすジカウイルスは、ネッタイシマカやヒトスジシマカを媒介するが、アカイエカはジカウイルスを感染させない。
この研究は米国カンザス州立大学獣医学部バイオセキュリティ研究所のDana Vanlandingham助教授(ウイルス学)らのグループが『Vector-Borne and Zoonotic Diseases(動物媒介性および人畜共通感染症)』(10月1日号)で発表したもの。
この既存の定説を覆す新たな知見は、ジカウイルスの封じ込め対策に重要だ。封じ込め対策のターゲットをネッタイシマカやヒトスジシマカに絞り込めるため、その時間も労力もコストも削減できるからだ。
世界に広く蔓延しているアカイエカは褐色の蚊だ。西ナイルウイルス熱や日本脳炎を媒介することから、ジカウイルスのベクター(運び屋)と目されていた。
Vanlandingham助教授らの研究グループは、ジカ熱が拡がっているフロリダ州などでアカイエカを経時的に分析したところ、アカイエカの体内でジカウイルスは増殖しない事実を確認した。
バイオセキュリティ研究所のStephen Higgs所長によると、米国ではアカイエカをリストから外し、ジカウイルスを感染させるネッタイシマカやヒトスジシマカにフォーカスした封じ込め対策が立てられると期待している。
流行地に渡航して感染した日本人は11人!
国立感染研究所の『ジカウイルス感染症のリスクアセスメント第9版』(2016年9月26日改訂)を参照しながら、ジカ熱の現況と感染機序などを整理しよう。
1947年にウガンダのZika forest(ジカ森林)のアカゲザルから初めて分離されたのがジカウイルスだ。ジカ熱は、2007年にミクロネシア連邦ヤップ島で流行した後、2013年に仏領ポリネシアで約3万人が感染。2014年にチリのイースター島、2015年に中南米、ブラジル、コロンビア、カリブ海領域などに飛び火した。
日本人の感染例もある。2013年12月に仏領ポリネシアのボラボラ島に滞在した男性(27歳)、女性(33歳)の2症例、2014年7月にタイのサムイ島に滞在した男性(41歳)の1症例、2016年2~9月に中南米、オセアニア太平洋諸島、ベトナムに渡航した8症例、合計11例が確認ずみだ。
感染症法の4類感染症に指定されたジカ熱は、ジカウイルス病と先天性ジカウイルス感染症に分類され、検査体制や検疫体制が整備された。『蚊媒介感染症の診療ガイドライン』(第3版)に基づく診療体制も強化されている。
今年9月6日、WHO(世界保健機関)は『ジカウイルスの性行為感染の予防に関するガイダンス』を改定。流行地から帰国した男女は、感染の有無に関わらず、最低6か月間は性行為の際にコンドームを使用するか性行為を控えること、流行地から帰国した妊娠を計画しているカップルまたは女性は、最低6か月間は妊娠の計画を延期するように奨めている。