都市と田舎では脳の発達に変化
2013年に学術専門誌『英国王立協会紀要』に掲載された、都会と田舎のネズミの脳の違いを調べた米ミネソタ大学の研究報告によれば、都会のネズミの方が、脳が6%大きかった。これは、一世代で大きく成長したわけではなく、都会暮らしが始まった何世代かを通して成長し、ある段階からはストップしているという。
同じく動物の研究では、スウェーデンのルンド大学が、都会と田舎のシジュウカラを比較研究し、都会の方が短命であることを明らかにした。染色体の一部で、成長を司るテロメアに長さの違いが見られたという。
このような動物研究でも、都市と田舎では、脳の発達に変化が起きることがわかっている。動物はヒトと違い、教育や貧富の差というファクターがないため、居住環境への順応が、脳の変化の要因になると推測されるのだ。
都市デザインでストレスの少ない街へ
とはいえ、都市人口の比率は世界的に増え続けているし、田舎に引っ越せる人ばかりではない。そこで注目されているのが、都市デザインだ。建築デザインに環境心理学の要素を兼ね備えた街づくりで、都市ストレスを軽減できるという。
都市デザインと精神的な幸福度の関係を専門とする国際的なシンクタンク、アーバンデザイン・メンタルヘルスセンターの代表のレイラ・マッケイによると、ストレスの少ない街の基本は、次の通りだ。
・自然や緑に触れられる空間があること
・公共エリアが誰もがアクセスしやすく、社会活動しやすくなっていること
・生活や仕事をする上で安全が保たれていること
彼女が<理想的な街>と評するロンドンのバービカンという街は、商業・居住複合の再開発地区で、ヨーロッパ最大の文化施設であるバービカン・センターもある。
緑にあふれ、湖とその脇にデッキがあり、車よりも歩行者優先のゆったりした雰囲気で、住民がさまざまな社会活動をしたり、くつろいで過ごす小さな広場があるという。
反対に、空っぽのテナントや家が横たわる荒廃した雰囲気は、精神衛生によくない。都市の中にあってプライバシーが保たれる造りの高層住宅も、孤独感や社会交流の不足、生活全般を自己管理しなければならないなど、ストレスを強める要因になりかねないという。
日本は比較的、都市部でも緑が豊かな国だが、「アーバンストレス」に挙げられる点は多々ある。今後は、住民が日常的に利用するショッピングモールや駅ビルなどの空間デザインが、私たちのストレス軽減に役立つだろう。
(文=編集部)