田舎のほうが長生き?(shutterstock.com)
今、田舎暮らしを希望する人が増えている。
『産経WEST』によると、大阪に拠点を置くNPO法人の応じた田舎への移住に関する相談や面接が、この4年間で1.5倍に増えたという。相談者の半数以上が、若者や40代までの子育て世代だ。
ふるさと回帰支援センター、および大阪ふるさと暮らし情報センターの各調べでは、東京に住む人が希望する移住先のトップ3は、長野県・山梨県・島根県。大阪では、和歌山県・岡山県・兵庫県だ。
都会であくせく働いても「アベノミクス」の恩恵を受けられず、現実には収入は横ばいという人が大半である。ならば、生活費のかからない田舎でのんびり暮らすのも選択肢のひとつ、という思考になって不思議ではない。
なによりも、都会はストレス要因が多い。それどころか、都会での生活はリスクが高いかもしれない。研究報告によると、田舎よりも都市部のほうが精神疾患にかかる率が高いという。
都市部の生活は脳がストレスフルに
独ハイデルブルグ大学のメンタルヘルス中央研究所は、2011年に行った研究で<都市部の生活者の方が脳へのストレスが大きい>ことを明らかにし、英国の科学誌『ネイチャー』に論文発表した。
具体的には、脳にある扁桃体と前帯状皮質の2カ所で大きなストレス反応を示したという。扁桃体は、不安や恐怖など主に負の感情を司る部分でストレスと関係が深く、うつ病や不安障害に大きく影響するとされている。
扁桃体は、感じたストレスや不安に対し、心身がうまく対応するよう働く器官だが、ストレスを受け続けると過剰反応となり、それが病気の原因になることもある。
また、前帯状皮質は、血圧や心拍数などの自律神経や認知機能を司る部位で、扁桃体の活動を抑える役割をする。
この扁桃体と前帯状皮質の機能的結合が弱くなるほど、不安・抑うつ傾向が強まることを、国立精神・神経医療研究センターの研究グループが解明し、2013年に論文発表した。
ポーランドの社会文化をテーマとした週刊誌『プシェクルイ』が明らかにしたところによると、都市生活者は田舎暮らしの人よりも、不安障害が21%、さらには気分障害(うつ病)が39%も高い確率でかかるという分析報告がある。
2005年には、都市部で育った人が統合失調症にかかる確率が、田舎暮らしの2倍という調査報告も上がり、関係者を驚かせた。