医療イノベーションの強力なトリガーに
「HAL医療用下肢タイプ」は、脚の長さ、腰の幅、足のサイズに合わせて調整できるので、下肢に障害がある人や脚力が弱くなった人の歩行や立ち座りを細やかにアシストする。歩行運動を繰り返せば、歩行機能を改善する。歩きたい、立ちたいという意思が下肢と巧みに連動し、歩けた、立てたという下肢の感覚を瞬時に脳に伝え、教える。まさに、脳の学習能力を日々進化させるAI(人工知能)ロボットなのだ。
「HAL医療用下肢タイプ」は、緩徐進行性の神経・筋難病疾患のうち、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症をはじめ、シャルコー・マリー・トゥース病、遠位型ミオパチー、封入体筋炎、先天性ミオパチー、筋ジストロフィー脊髄損傷、外傷性脳損傷、脳血管障害などの改善に役立つ。医療保険適用の恩恵を受ける患者は、およそ3400人に上ると見込まれている。
今回の医療保険適用の実現は、ロボットスーツHALの普及を加速し、神経・筋難病疾患の患者が安心して最先端の治療を受けることにつながる。最新のサイバニクス技術と医療保険のコラボレーションこそが、医療イノベーションの強力なトリガー(引き金)になるにちがいない。
ちなみに、羽田空港ターミナルビルにもHALがいる。ロボットスーツHAL(作業支援用腰タイプ)、AI搭載の掃除用のクリーンロボット、指定したルートを自動走行する屋内用の搬送ロボットが仲良く働いている。掃除や運搬に活躍する姿を目撃した人も多いかもしれない。
佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。