インタビュー「薬物依存は慢性疾患である」第1回:松本俊彦(国立精神・神経医療研究センター・薬物依存研究部部長)

ASKA、清原和博、高知東生、高樹沙耶…薬物依存は「厳罰」でなく「医療モデル」で治療を

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
371384623.jpg

薬物依存は厳罰主義ではなく「医療モデル」で治療すべき(shutterstock.com)

 ASKAや清原和博、高知東生など、芸能界やスポーツ界にも広まる覚せい剤汚染――。先日も、女優の高樹沙耶が大麻所持の疑いで逮捕され、薬物問題の裾野の広さがあらためて明らかになった。

 一向に少なくならない再犯者の数は、厳罰による取り締まりだけでは再使用の歯止めにはならないという現実を表している。薬物依存症者への対策はどうあるべきか。私たちは薬物という問題にどう向きあえばいいのか。

 国立精神・神経医療研究センター・薬物依存研究部部長で、薬物問題の第一人者である松本俊彦医師に、薬物対策のあるべき形について聞いた。

薬物依存は「医療モデル」で治療するべき

――松本先生は、覚せい剤などの薬物依存を<慢性疾患>として捉え、「厳罰主義」ではなく、「医療モデル」によって治療すべきと考えているそうですが、その根拠と考え方について聞かせてください。

 日本の刑務所が現在過剰収容になっている最大の理由は、覚せい剤取締法事犯者が大量に収容されていることです。しかも、そのほとんどが、再犯、再々犯など、何度も覚せい剤で捕まっている人たち。

 なぜ、懲りずに同じ罪を犯すのか? それは、覚せい剤依存症は医学的な障害、つまり健康問題であって、厳しい刑で罰するだけでは再使用を防ぐことができないのではないか、と考えた問題意識が出発点です。

 実際に、私が刑務所で覚せい剤の累犯者に話を聞くと、「覚せい剤が原因で家族や友人、あるいは組織の親分やアニキには何度も叱られたり殴られたりしている。だけどそうやってヤキを入れられたあとには、余計に覚せい剤をやりたくなった」というんです。

 そういうふうに、シラフでいられなくなって薬を使ってしまう状態は、犯罪というより「慢性疾患」に関する健康問題であると考えた方が妥当なのです。

 覚せい剤依存というのは病気であって、病気である以上、刑罰や叱責による歯止めには限界がある。だから、医療者は患者として相対し、できることをやっていくことの方が大事なんです。

 ただ、病気として捉えるというサイエンスの考え方に対し、厳しく罰するべきであるというイデオロギーの部分で納得できないという方はたくさんいらっしゃいます。

<治療の中断>を減らした「オンライン診療」~会社やカフェからアクセスする患者たち
インタビュー「自宅や職場からの遠隔診察を可能に」第3回:新六本木クリニック・来田誠院長

第1回:<治療の中断>を減らした「オンライン診療」~会社やカフェからアクセスする患者たち
第2回:通院不要の「オンライン診療」~支払いはクレジット決済、薬は院外処方箋を自宅に配送
第3回:<治療の中断>を減らした「オンライン診療」~会社やカフェからアクセスする患者たち
 「5大疾病」のひとつとされ、もはや誰でもかかりうる病気となった精神疾患。その治療は長い期間にわたることが多いため、通院には負担がかかるのが常だった――。そんな精神科の診療をオンラインで行うことを可能にし、利便性を高めたのが新六本木クリニックだ。

理学療法士。日本で理学療法士として勤務した後、豪…

三木貴弘

大阪大学大学院言語文化研究科教授。米国ウィスコン…

杉田米行

精神保健福祉士。フリージャーナリスト。1977年…

里中高志