インタビュー「薬物依存は慢性疾患である」第1回:松本俊彦(国立精神・神経医療研究センター・薬物依存研究部部長)

ASKA、清原和博、高知東生、高樹沙耶…薬物依存は「厳罰」でなく「医療モデル」で治療を

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プログラム修了後の再犯率は21%、刑務所に行った人の再犯率は78%

――松本先生の主張は「刑罰を緩くする代わりに医療を手厚くする」ということなのでしょうか?
 
 刑罰に関しては刑法を変えなければならないですし、日本でただちにそうするべきだと言うつもりもありません。

 一時的に身柄を拘束され、物理的に薬物から離れ、「しらふ」の頭でこれからの生き方を考える時間が必要な人もいます。ただ、それと薬物依存摂からの回復とは別の問題です。

 ただ、薬物には厳しいアメリカですら、1980年代からドラッグコートという制度が行なわれています。

 これは薬物の使用や所持犯に対して、裁判所が刑務所に行くか治療施設に行くかを選ばせるというものです。治療を選んだら自宅に戻って裁判所が指定した治療施設に自宅から通うという仕組みです。

 治療を選んだドラッグコートの卒業生の、プログラム修了後3年以内の再犯率は21%。一方、刑務所に行った人の出所後3年以内の再犯率は78%であったと報告する研究もあります。

――しかし、厳しく罰せられなくなると、「バレても大したことはない」と思って薬物に手を出す人が増えませんか?

 日本の状況を見てみると、覚せい剤で捕まった人が、再び薬に手を出すのでいちばん多いのは、刑務所を出た直後、それから保護観察が終わった直後や精神科病院を退院した直後といった、<隔離や法的な拘束が終わった直後>です。

 だからといって、一生刑務所に入れたり、監視下に置くわけにはいきませんよね。だから解放するときに再使用のリスクを少なくする方法をまず考えないといけません。

 そこで2016年6月から始まったのが、刑の一部執行猶予制度。たとえば、懲役3年と判決が下された場合、刑期の終わりの1年や半年といった期間を出所して過ごすかわりに、2年間の保護観察を設けて、地域での治療を受けるというものです。

 刑務所を出てからでも地域でのケアが続くというのは大きな前進ですが、問題は保護観察が終了したとき。その後も社会とつながっていられるように、相談できる期間や場所を作っておくことが大事だと、私は考えます。

薬物依存症の治療を受けられる場所が少ない

――再使用をしないための地域ケアは、どのようなものがいいのでしょうか?

 医療に限らず、「ダルク」などのリハビリ施設や自助グループでもいいし、公的な保健福祉機関の相談員でもいいのです。いずれにせよ、薬物依存症の治療においては、とにかく薬物について率直に話せる援助者との関係性が長く続くほど、再発率が低いことが分かっています。

 ところが、薬物依存症の治療を受けられる場所が非常に少ない。その状況はいまでも続いています。まずは、これを変えていかなければならないと思います。
(取材=ライター・精神保健福祉士・里中高志)


松本俊彦(まつもと としひこ)
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長。1993年、佐賀医科大学医学部卒業後、神奈川県立精神医療センター、横浜市立大学医学部附属病院精神科などを経て、2015年より現職。日本アルコール・薬物医学会理事、日本精神科救急学会理事、日本社会精神医学会。著書に『薬物依存の理解と援助』(金剛出版、2005)、『自傷行為の理解と援助』(日本評論社、2009)、『自分を傷つけずにいられない』(講談社、2015)、『よくわかるSMARPP─あなたにもできる薬物依存者支援』(金剛出版、2016)などがある。

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