中村祐輔のシカゴ便り8

SMAP解散へ! 5つの個性をひとつの花瓶に入れるのは難しい。“日の丸医療”を世界で花咲かせたい

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それぞれの個性を咲かせて欲しいSMAP

 生まれて初めて、日本のお盆休みに相当する期間に、休暇を取った。世間では祝祭日でもないにもかかわらず、この時期に多くの人が休暇を取り、大渋滞・大混雑を引き起こす。しかし、病院や大学では、自分で休暇を取る手続きをしない限り、休みにはならない。特に、私が医師として働いていたころは、一番若手であったこともあり、ゴールデンウイーク、お盆休み、正月休みなどをゆっくり取るのとは無縁の日常であった。

 最近の若い人は平気だろうが、私のように気が弱いし、サンフランシスコ平和条約が発効した年に生まれたような世代には、「私がこの期間に 働きます」としか言えない。そして、自分の研究室を持ってからは、馬車馬のように働いていたが、さすがにリフレシュしないと心も体も持たなくなってきた。

個別医療プロジェクトのテーマは「世界に一つだけの花」

 その休みの間に、SMAPが解散するというニュースを目にした。噂が流れていたので、「もしやもしやの岸壁の母」と思っていたが、それが現実となった。1度目の留学から帰国した後は、カラオケにも日本の音楽にもほとんど無縁だったので、最近の歌手やグループの名前を聞いてもほとんど???だが、「世界に一つだけの花」を「オーダーメイド医療プロジェクト」の活動の際に利用させていただいていたので、少し寂しい。

 みんな異なった種があり、異なった花が咲くので、5つの個性ある花をひとつの花瓶に入れるのは難しくなったのだろう。

 個性と言えば、私のシカゴ大学の研究室には、これまで延べ15カ国の研究者が在籍した(現在は10か国)。それぞれの国の文化的背景も、歴史的背景も異なるので、その行動様式は千差万別だ。もちろん、同じ国であっても、育った地域・環境によって、かなりの差がある。しかし、全員が自国に誇りを持っている点では共通している。

 オリンピックともなると、やはり、自国の選手の活躍は気になる。休暇中にテレビをつけると、偶然、女子レスリングの3人の日本人選手の金メダルの様子が流されていた。3人とも、ハラハラドキドキしながら、もうだめかと思った瞬間の大逆転劇だったので、心臓に悪い。

 バドミントンも最終セット19対16の劣勢からの5連続得点で金メダルだった。どうも、大和撫子は土壇場で勝利への執念がメラメラと燃え上がるようだ。

 そして、最も印象的・感動的だったのが、柔道の井上康生監督のインタビュー中での涙だった。日本の国技である柔道再建の重荷を背負った重圧は想像を絶するものだったろう。「日の丸」を国旗として認めない人たちには、この感動は味わえないだろう。他にも多くの選手が「日の丸」に涙していたが、オリンピックだけではなく、すべての分野で国を背負う気持ちを持った若者を育てることが大切だ

 医学・医療の分野の若者たちに、国の医療の在り方、国の未来の医療と、国を意識する人材がいったいどれだけいるのかと考えると、はなはだ心もとない。医療分野で「日の丸」を掲げることは、国の誇りにつながる。

 日本が、日本人が開発した薬が、治らない病気を治すことができ、そして、世界中の人たちがあまねく利用できるようになれば、世界は間違いなく、日本を、日の丸を尊敬するだろう。そんな日本人研究者が、今回のオリンピックのように二桁でてくればと願うばかりだ。もちろん、私もその一翼を担いたい。

※『中村祐輔のシカゴ便り』(http://yusukenakamura.hatenablog.com/)2016/0819 より転載

中村祐輔(なかむら・ゆうすけ)

がん研究会がんプレシジョン医療研究センター所長。1977年、大阪大学医学部卒業。大阪大学医学部付属病院外科ならびに関連施設での外科勤務を経て、84〜89年、ユタ大学ハワードヒューズ研究所研究員、医学部人類遺伝学教室助教授。89〜94年、(財)癌研究会癌研究所生化学部長。94年、東京大学医科学研究所分子病態研究施設教授。95〜2011年、同研究所ヒトゲノム解析センター長。2005〜2010年、理化学研究所ゲノム医科学研究センター長(併任)。2011年、内閣官房参与内閣官房医療イノベーション推進室長、2012年4月〜2018年6月、シカゴ大学医学部内科・外科教授兼個別化医療センター副センター長を経て、2016年10月20より現職。2018年4月 内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)プログラムディレクターも務める。

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