「人と関わらない仕事」を希望する現代人?
また、今回の学会では別の2件の報告でも、<脳を鍛えること>が認知症リスクの低下につながる可能性が示唆された。「高等教育を受けて、社交的である人」「精神的な刺激の多い仕事に従事する人」が優位で、「迅速に思考する脳トレーニング」の効用などである。
Boot氏の説明によれば、いずれの知見も<認知的予備力cognitive reserve>の概念と関連している。一方、彼らの知見が「精神的に刺激のない仕事」が原因で「認知症になる」という意味ではない、という点も強調している。
そこで試しに、「人と関わる仕事」をキーワードにネット上で検索してみると、むしろ、<人と関わらない仕事>、「対人ストレスの少ない職業」の紹介が散見する。
具体的な職種には、工場作業・検品作業・夜間清掃員・施設警備員・新聞配達・ポスティング要員・内職など。確かに、課せられた仕事を黙々とこなすイメージだ。
ある職業紹介サイトでは、「ほとんど人と関わらない仕事」として、ネットショップ開設やオークションでの転売、フリーのプログラマーやゲームテスターなどの在宅ワークが挙げられていた。
「人と関わりたい仕事」よりも「あまり人と関わらない仕事」への要望(=検索)が多いのは、日本人の傾向なのだろうか。
だが、システムエンジニアを例に取っても、システムの要件定義や仕様確認をめぐるクライアントとの打ち合わせや社内会議など、他者と交わらないことには密室にも篭もることはできないはずだ。
ならば、職業選択の際、さらには実際に働くときにも、<脳にかかる負荷>、つまり、人間関係の煩わしさを厭わないことが、結果、あなたの将来の認知症リスクを低下させるかもしれない。
(文=編集部)