連載「恐ろしい危険ドラッグ中毒」第22回

【閲覧注意】合成麻薬「クロコダイル」の常習者は離脱不可能、ゾンビ化し必ずや死に至る!

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クロコダイルを使用したら最後、死に至る

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腕の肉が削げ落ちてしまった中毒患者~ノボーチス通信

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下肢が爛れ壊死状態に~ノボーチス通信

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顔面の半分が溶け出している~YouTubeより

 クロコダイルの症状で特徴的なのは、不衛生な製造工程やガソリンに含まれる不純物によって、注射部位の血管が破壊され、血流が停止し、筋肉の壊死を引き起こすことである。皮膚は緑黒色に変色し、数カ月後には、骨が露出して四肢の切断をせねばならない状況に追い込まれる。写真のように緑黒色に変色した皮膚が無数に出現し、短期間で無欲状態に変貌する(提供:ノーボスチ社)。

 注射器の使いまわしによる感染症のリスクも非常に高い。精神的にも荒廃し、社会的にも廃人となり、さらに肝不全や腎不全などを併発して、常習者の余命は1~2年である。

 診察した医師は「手遅れで死を待つのみである」と宣告せざるを得なくなるのが現状だ。ヘロインや大麻の常習者は離脱・治癒する可能性が残されているが、クロコダイルに関しては、使用したら最後、死に至る病である。

麻薬大国ロシアには常習者が250万人も

 クロコダイルがロシア国家に及ぼした損失は計りしれない。麻薬大国ともいわれるロシアには、常習者が250万人もおり、クロコダイルによる重症中毒患者は数十万人にも及ぶ。しかも、常習者の多くは、10~20歳代の前途ある若者が中心。安易にクロコダイルに手を染めたため、自殺行為に等しい重大な被害を受けることになってしまった。

 先述のように、クロコダイルの製造法を解説するウェブサイトの規制・摘発・閉鎖などの対策は不十分であった。特に原材料であるコデインが医師の処方箋なして、いつでも誰でも簡単に入手可能であることに対する対策が後手に回ってしまった。処方箋所有者だけに販売するなどの早期の対策が必要であったと思われる。

 クロコダイルの我が国への流入は、幸いにも現在のところは見られない。しかし、最近、ドイツやフランスなどの先進国にも飛び火したとの情報もある。

 今後、我が国でクロコダイルが蔓延することがないように警戒を怠ってはいけない。そのためには、クロコダイルなどの自家製合成麻薬に関する情報提供を積極的に行うべきだ。私たちも、危険ドラッグや大麻などと同様に、その有害性を十分認識して、絶対に手をださないことが何よりも必要であろう。


連載「恐ろしい危険ドラッグ中毒」バックナンバー

横山隆(よこやま・たかし)

小笠原記念札幌病院腎臓内科。日本中毒学会認定クリニカルトキシコロジスト、日本腎臓学会および日本透析学会専門医、指導医。
1977年、札幌医科大学卒、青森県立病院、国立西札幌病院、東京女子医科大学腎臓病総合医療センター助手、札幌徳洲会病院腎臓内科部長、札幌東徳洲会病院腎臓内科・血液浄化センター長などを経て、2014年より札幌中央病院腎臓内科・透析センター長などをへて現職。
専門領域:急性薬物中毒患者の治療特に急性血液浄化療法、透析療法および急性、慢性腎臓病患者の治療。
所属学会:日本中毒学会、日本腎臓学会、日本透析医学会、日本内科学会、日本小児科学会、日本アフェレシス学会、日本急性血液浄化学会、国際腎臓学会、米国腎臓学会、欧州透析移植学会など。

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