陸上選手の25%が「鉄欠乏性貧血」に! 日本陸連も警鐘を鳴らす「スポーツ貧血」の恐怖

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鉄剤の過剰摂取や静脈への鉄剤注射の連鎖を断つために

 この悪循環の解決に乗り出したのが日本陸連だ。

 今回のセミナーで尾県貢専務理事は、安易な静脈への鉄剤注射は体内の鉄過剰状態を引き起こして非常に危険であり、体調が悪いという訴えだけで鉄剤の過剰摂取や静脈への鉄剤注射に走ってはならないと強く警告している。

 また、ロサンゼルス五輪女子マラソン代表でスポーツジャーナリストの増田明美さんは、鉄剤を摂取して血中の鉄の数値が上がれば、「主食を抜いても構わない、食べなくても大丈夫」と思い込む危険性が高いと指摘し、全国高校駅伝出場チームの全選手に血液検査を科すべきだと提案している。

 さらに、第一生命の山下佐知子監督は、成長期に鉄剤に頼って走ってきた選手は体ができていないし筋肉の質や骨が伴っていないので実業団の練習に耐えられない選手が多い、鉄剤の過剰摂取や静脈への鉄剤注射を解決しなければ長距離の未来は危ういと強調した。

 日本陸連は、静脈への鉄剤注射に関しては現場任せだったが、女子マラソン再建のためには放置できない課題と危機感を募らせ、アスリートの健康確保のため、貧血の予防・早期発見・適切な治療をめざす「アスリートの貧血対処7カ条」を採択。鉄剤の過剰摂取の警告文書を各都道府県協会を通じて配布している。

「アスリートの貧血対処7カ条」
①食事で適切に鉄分を摂取
②鉄分の摂りすぎに注意
③定期的な血液検査で状態を確認
④疲れやすい、動けないなどの症状は医師に相談
⑤貧血の治療は医師とともに
⑥治療とともに原因を検索
⑦安易な鉄剤注射は体調悪化の元凶

 このようなアスリートの貧血対策やスポーツ貧血の治療に取り組んでいるスポーツ内科外来もある。

 兵庫県明石市にある特定医療法人大久保病院(山村誠院長)スポーツ内科・婦人科外来は、アスリートのコンディションを整え、パフォーマンスを向上させるために、アスリートやスポーツ愛好家(市民ランナーなど)を対象にスポーツメディカルチェック(アスリート向け健康診断)を行っている。チェック項目は次の通りだ。

①スポーツドクターによる問診・身体診察
②身体測定・バイタル測定
③心電図(致死性不整脈や狭心症の有無を評価)
④胸部レントゲン
⑤血液検査(鉄・フェリチンを含む)
⑥尿検査
⑦呼吸機能検査

 このスポーツメディカルチェックによって、スポーツ中の重大事故の予防、自覚症状のないスポーツ内科疾患の早期発見、パフォーマンスの向上などに役立っているという。

 8月開催のリオ五輪が迫ってきた。世界のアスリートは、スポーツ貧血だけでなく、運動誘発性喘息、無月経、異常スポーツ心臓、オーバートレーニング症候群、脱水症、栄養失調、電解質異常、ストレス性疾患、胃腸障害など、多くのリスクに向き合ってトレーニングしている。ベスト・コンディションをキープして記録にチャレンジしてほしい。
(文=編集部)

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