授乳制限と母乳神話の壁
これが高齢出産(者)の場合、そのカルシウム不足を十分に補うのに難儀する。結果、骨がもろくなっていると推測されている。
となれば骨の状態が良好ではない母子の場合、「授乳制限が必要かもしれない」と専門医は見立てている。具体的には新生児の栄養上、母乳が必須ではなくなる「産後1カ月くらい」を目安に授乳制限を指導すべきらしい。
この「高齢出産」「授乳制限」というコトバから連想されるのが産婦人科医、宋美玄さんの体験談だ。昨年11月、「39歳での高齢出産で妊娠糖尿病という合併症も」かかえながら無事第二子を出産した。
初産時の母乳育児に「とても辛い思い出」をもつという宋さん。お産直後から空腹で泣き続ける赤ちゃんに自身は不眠の日々、何度も吸わせたがようやく滲む程度に母乳が出始めたのが退院時期で……。
当時の想いを彼女は連載コラムでこう綴っていた。
「娘の体重は減り続け、しんどい授乳姿勢で肩が凝り、手はけんしょう炎になり、乳頭には水泡ができて吸わせるだけで激痛。粉ミルクを併用しながら母乳の分泌が安定するまでの約3週間、不安と罪悪感を感じ……」
授乳しながらスマホ検索
産婦人科医にして妊婦でありながら、産後と母乳の知識は「恥ずかしながら」聞きかじり程度だったという宋さん。
専門書よりも先につい「授乳しながらスマホ検索」に走ったと正直に綴っていたが、ネット上でも玉石混交の母乳神話/ 至上主義の優位性が著しく、母乳育児問題のデリケートさを痛感したという。
彼女が小児科医・森戸やすみさんとの共著『母乳でも粉ミルクでも混合でも! 産婦人科医ママと小児科医ママのらくちん授乳BOOK』を上梓したのも、そんな初産時の体験実感が背景にあったからだ。
一方、近年の傾向として深刻化しているのが、妊娠前の過度なダイエット志向だ。その悪影響で骨量の少ない女性が増え、加齢に伴う骨折リスク、という悪循環が形成されている。
(文=編集部)