高齢出産には骨折というリスクも潜む(shutterstock.com)
4月中旬、インド北部ハイヤナ州の医療施設で「自称70歳」(施設側の推定年齢72歳)の女性が、第一子を産んで話題を呼んだ。
インド国内の複数メディアによると、出産したのは、北部のアムリツァル在住で79歳の夫と結婚40年超の暮らしを続けるダルジンダル・コールさん。
夫婦は子宝に恵まれず、数年間の不妊治療の末、体外受精で妊娠・出産に成功したという。
過去には、66歳時点の英国女性の出産例(2009年)がある。その前年のインド女性の出産例(当時70歳)が「世界最高齢」と報じられており、それを更新する初産記録となった。
そんな希望の光をおぼえる外電が伝わる一方、少子高齢化が進むわが国では、高齢主産(35歳以上)をめぐって憂慮すべき事態が浮上してきた。
日本骨粗鬆症学会では近年、「高齢出産した女性に(出産前後に)腰椎の圧迫骨折が増えている」という報告が多くあげられるようになったという。
腰椎は、溶けやすいスポンジ状(海綿骨)の割合が多く、妊娠中の体重増加などが理由で骨折しやすいのでは、と推測されている。
ところが、骨の変化や骨折の実態把握はこれまで放置されてきた。その理由は、骨折の自覚症状が捉えにくく、エックス線検査も胎児への影響が懸念されているためだ。
いよいよ始まる腰椎の実態検査
そこで、前掲の報告例を重要視した大阪市立大病院の研究チームは先頃、出産が母体の骨に与える影響の本格的調査をはじめる意向を明かした。
具体的にはエックス線に替わる超音波で、より精度の高く骨の状態が測れる装置が開発され、未踏の検査が可能になったからだ。大学側の装置導入をうけて研究チームは6月中を目途に、35歳以上の妊婦を中心とする100人程度の協力者を募るという。
今回の研究では、妊娠期(初期/中期/後期)と授乳期(出産直後/出産3カ月後)のおよそ1年強の間に計5回の検査を実施する。その期間の骨の密度や厚さなどが、どのような変化をおよぼすのかが調べられる。
周知のとおり、この妊娠期から授乳期の間、母体では大量のカルシウムが胎児に供給される。その際、若い女性であれば、一時的に骨の量が減っても数カ月で回復できる。
年齢的に食べものからのカルシウム吸収量が豊富だったり、吸収をうながすビタミンDが体内で多く作られるためである。