国家の干渉や企業の利害から独立した中立のポジションで運営される
コクラン・レビューを作成しているコクラン共同計画は、1992年にイギリスの国民保健サービス(NHS)の根拠に基づく医療(EBM)を評価するために、スコットランドの医師アーチー・コクランがイギリスのオックスフォード大学で立ち上げた国際プロジェクトだ。
現在、世界13カ国15カ所のコクランセンターで、およそ2万8000人ものボランティアがコクラン共同計画の運営に参加。日本では、記憶に新しい『ネイチャー』のSTAP細胞の論文、『ランセット』のディオバン事件など疑惑が頻発したため、2014年5月に日本支部が設立された。
ちなみに、2013年に発覚したディオバン事件とは、高血圧の治療薬であるディオバン(物質名:バルサルタン)の医師主導臨床研究に、ノバルティス日本法人のノバルティスファーマ社の社員が、統計解析者として関与した利益相反問題のこと。臨床研究の結果を発表した論文のデータに問題があったとして、一連の論文が撤回された。
コクラン共同計画は、国家の政治的な干渉に左右されない、特定の団体・企業の経済的な利害に一切関わらない、利益相反行為を行わない中立・独立の立場を貫いていることから、世界の医療従事者や患者・国民の絶大な信頼を得ている(参考:コクラン共同計画)。
現在、コクラン・レビューを世界の医療従事者、患者・国民に届けるために、各国語に翻訳するプロジェクトが進行中だ。日本語への翻訳は、日本医療機能評価機構の医療情報サービス(Minds)が行ってきたが、2017年からは日本支部が進めていく計画だ(参考:コクラン・レビュー日本語サイト)。
このサイトでは、約6500編のシステマティックレビューのアブストラクト(抄録)を公開。そのうち、補完代替医療に関するレビューは約650編ある(参考:コクラン・レビュー補完代替医療)。
治療法や手術法が分からない時、薬の飲み方などで困った時、正しいヘルスケア情報を知りたい時、あなたをサポートしてくれるヘルスケア情報のデータベース、コクラン・レビューが、ますます役立ちそうだ。
(文=編集部)