2014年最大の茶番劇、STAP細胞騒動をまとめる その1

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Title:Acid bath offers easy path to stem cells Author:David Cyranoski Publication:Nature News Publisher:Nature Publishing Group Date:Jan 29, 2014 Copyright © 2014, Rights Managed by Nature Publishing Group

 12/19理研記者会見の報道を見て、「やっと終わったか...」と思った。
この細胞については、2/3付のメルマガで「免疫遺伝子に再構成のある分化したT細胞から幹細胞を作ったら、免疫不全マウスができるはず」と疑念を表明して以来、126回もネットで発言している。その第1回に当たる2/3付で、日本の報道について、こう書いた。

<1/30付各紙が遺伝子導入をしない多潜能幹細胞の作成に理研(神戸)の女性研究者が成功したと報じている。「共同」は論文が「ネィチャー」誌に掲載されたというのが主体だ。
 http://www.47news.jp/news/2014/01/post_20140129205928.html
「読売」は祖母にもらった割烹着をつけて実験をするというのを強調している。(2/3までの各紙はすべてこの手の報道で、研究の中身についての<解説報道>がない。日本語では「ニュートン」か「日経サイエンス」のような科学雑誌を待つほかないのか...。情けない。)
 http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20140130-OYT1T00213.htm
バカバカしくて、読んでいられないので1/29付NYTとワシントンポストの記事を読んだ。>
<今朝1/30の各紙は一面トップ記事のほかに、国際面や社会面でも大きく扱っている。これは理研側のパブリシティ作戦だろう。ただ報道には不審な点もある。
 Obokataという姓でNIHのPubMedを検索すると、50近い論文がヒットするが、大部分はA, J, T, Nというファーストネームの研究者。H.Obokataではたった7本しか引っかからない。うち筆頭論文は2本だけだ。(Nature論文はまだ入力されていない。)
 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=Obokata+H
 PubMedリストの2番目の論文の末尾に名を連ねているのが、ハーヴァード大時代の上司C.A.Vacanti(「共同」はバカンティと音訳している)である。
 Nature電子版1/30号には、一挙に2本の論文がトップオーサーで掲載され、編集部による記事も載っており、さらに音声インタビューも貼り付けられている。
 http://www.nature.com/news/acid-bath-offers-easy-path-to-stem-cells-1.14600

 今までは「下働き」的な研究で、自前でやった研究の論文がいきなりNatureに2本も同時掲載されるというのはきわめて珍しい。
 ただこれがマウスだけに起こる現象か、他の動物やとりわけヒトにも起こることなのか、そのへんの詰めは恐らくもう行われていると思うが、他の研究者による追試と再現性の確認を待つべきだろう。(マウスでは起こるがヒトでは起こらない、という現象もままある。)
 
 一般論として述べると、科学研究は他者による「再現性の追試」があって初めて事実として認定されるべきだ。2/1「読売」社説は、すでに事実として認定した上で、「メカニズムの解明を」と呼びかけているがいかがなものか...。>

科学FBI(ORI=研究不正防止局)のような制度の創設を

 <幹細胞研究では、ES細胞を使ったソウル大学教授の論文が「サイエンス」などにも掲載され、韓国政府が「国家英雄」の称号を授与し、大いにもてはやされていたが、2004年実験用ヒト卵子の「売買疑惑」を発端に、すべて捏造であると判明し公職追放となった事件が起きた。
 
昨年は医科歯科大・東大を舞台としたiPS細胞の臨床試験をボストンで実施している(場所も同じ「ハーヴァード大付属病院」)とした「森口事件」が起こったばかりだ。
 検証が比較的簡単な実験物理学のような分野でも、研究者間競争とメディアの過剰報道がからむと「常温核融合スキャンダル」のような信じがたい事件が起こっている。
 
 科学史全体をみると、NYTのニコラス・ウェイドが指摘するように、政治家の汚職・役人の不正ほどではないが、意図的・無意識・不注意による不正は科学者にも起こっている。人間のすることだから不正を100%防止するのは不可能だが、抑制力として米国が1980年代に設立した科学FBI(ORI=研究不正防止局)のような制度を設けることが、巨大科学を健康に保ち研究費の浪費を防ぐために必要なのである。>

難波紘二(なんば・こうじ)

広島大学名誉教授。1941年広島市生まれ。広島大学医学部大学院博士課程修了。呉共済病院で臨床病理科初代科長として勤務。NIH国際奨学生に選ばれ米国NIHCancerCenterの病理部に2年間留学し、血液病理学を研鑽。広島大学総合科学部教授となり、倫理学、生命倫理学へも研究の幅を広げ、現在、広島大学名誉教授。自宅に「鹿鳴荘病理研究所」を設立。2006年に起こった病気腎移植問題では、容認派として発言し注目される。
著書に『歴史のなかの性―性倫理の歴史(改訂版)』(渓水社、1994)、『生と死のおきて 生命倫理の基本問題を考える』(渓水社、2001)、『覚悟としての死生学』(文春新書、2004)、『誰がアレクサンドロスを殺したのか?』(岩波書店、2007)などがある。広島大学総合科学部101冊の本プロジェクト編『大学新入生に薦める101冊の本』(岩波書店、2005)では、編集代表を務めた。

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難波紘二
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