インタビュー「女性に多い膠原病とは何か?」第3回 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター 田中栄一医師

関節リウマチなど「膠原病」の治療法は?〜周囲のサポートをもらいながら病気と付き合う

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関節リウマチの治療法は?

――関節リウマチの治療法を教えてください。

 治療も10年前と比較したら、かなり進歩しました。抗リウマチ薬のひとつである『メトトレキサート』や、生物学的製剤(2015年5月現在、日本では8種類が投与可能)の使用がこの進歩に大きく貢献しました。

 『メトトレキサート』は関節リウマチの治療になかでも中心的な存在であり、関節リウマチの診断がされたら、まずは投与が考慮されるべき薬剤とされています。この薬剤の効果が十分でない場合に生物学的製剤の投与が検討されます。生物学的製剤が使用できるようになり、「寛解(かんかい)」といわれる良い状態が現実的に可能な治療目標となりました。

「寛解」とは、ほとんど関節の痛みや腫れがない状態であり、仕事や家事、育児、通学などの日常の生活が病気の発症前と同様にできるような状態です。我々の施設では6000名近くの関節リウマチの治療に携わっておりますが、通院している患者さんの半分以上がこの「寛解」の状態です。生物学的製剤は、有効性が期待できる反面、重篤な感染症などの副作用のリスクや、高額であるために経済的な問題も大きい薬剤であり、使用開始にあたってはリウマチ専門医とよく相談することが大切です。

 一方、関節痛に対して、抗炎症薬(痛み止め)やステロイド薬も併用されることはありますが、これらの薬剤は関節破壊を抑える効果はなく、あくまで痛みを取るために補助的に用いられています。

周囲のサポートをもらいながら病気と付き合うこと

――関節リウマチや他の膠原病治療の将来は明るいと捉えていいですか?

 関節リウマチはもちろん、それ以外の膠原病の治療の進化は日進月歩です。10年、20年後にはさらに診断や治療法が進歩し、さらに改善されていることでしょう。

 これまで元気であった方が、突然、膠原病と診断され、一生付き合っていく病気なのだと宣告されると、不安になったり、落ち込んでしまうことももちろんあると思います。膠原病は多くの場合、現時点では完治(治癒)するものではなく、いったん治療で改善しても、治療を中断してしまうと再発してしまうこともあります。

 しかし、関節リウマチを含めた膠原病と治療は確実に進歩していますし、実際、多くの患者さんは、職場や家庭など周囲のサポートをもらいながら、病気とともに上手に付き合いながら生活しています。好きなことややりたいことを諦めずに、仕事をこなし、家庭生活を送り、妊娠出産を経て生活をしている患者さんも多いです。そのためも、専門医への定期的な通院と適切な治療を続けてもらうことが大事だと思います。
(取材・文=夏目かをる)

田中栄一(たなか・えいいち)
東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター膠原病リウマチ内科・講師。1994年、滋賀医科大学医学部卒。専門は関節リウマチのコホート研究、関節リウマチの医療経済学。

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