膠原病の中では最も多い関節リウマチ(shutterstock.com)
女優で作家としても活動する酒井若菜さんの対談&エッセイ『酒井若菜と8人の男たち』(キノブックス)で、脚光を浴びる膠原病について、東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センターの講師・医局長の田中栄一医師に解説してもらった。
関節リウマチは「身近な難病」
――連載の最後は、関節リウマチについてももう少し詳しく教えてください。
関節リウマチを一言でいえば「身近な難病」です。膠原病の中では最も多くみられる病気で、日本では約70万人の患者さんがいるとされています。かつては老人の病気と思われていましたが、30〜50代の働き盛りの女性に好発します。関節リウマチによる関節炎が起きると、指・手首・ひじ・ひざ・足首などといった全身の関節に痛み・腫れ・こわばりなどの症状が現れます。とりわけ手首や指の関節から関節炎が起こることが多いです。進行性の病気であり、放置していると、骨が破壊されて関節が変形します。痛みも非常に強く、関節の変形が高度になると「茶碗と箸が持てない」「釣銭を受け取ることができない」など、日常生活にも支障がでてきます。
――関節リウマチの原因は分かっているのですか?
関節リウマチも他の膠原病と同様に自己免疫の異常によって引き起こされる疾患です。関節の中にある「滑膜(かつまく)」という組織を、自分の免疫が過剰に発現し攻撃することによって関節内に炎症が起こるのです。しかし、なぜ、本来は自分を守るべき免疫が異常となってしまうかの詳しい機序はまだ分かっていません。遺伝的に関節リウマチとなりやすい体質のある人が、環境的な要因と複雑に絡み合って発症するといわれています。環境的な要因としては、喫煙、歯周病、ウイルス感染、妊娠・出産、ケガや強度のストレスなどが知られています。
――関節リウマチを疑う時はどのような時ですか?
一言でいえば、診断のために最も重要なのが関節の痛みよりも腫れです。症状の特徴は、手指や手首を中心とする多関節にわたる関節の腫れであり、左右対称に起こるのが典型的です。関節の腫れがあることが診断するにあたっての大事な症状になります。起床後の手のこわばりも通常は1時間以上続きます。最近では、関節超音波検査(関節エコー)や抗CCP抗体測定(血液検査)などが行われ早期からの診断が可能となってきました。
一般的には一旦、関節の変形が起こってしまうと、適切な治療をしても手術以外では元に戻すことはできないとされています。しかも関節の破壊は発症後1〜2年で急速に進むことが多いとされています。ですから早期の診断と治療開始が極めて重要になります。関節に1か所でも腫れが続くようであれば、リウマチ科の受診をお勧めします。