突発性難聴、メニエール病、内耳性難聴が耳鳴りの原因
耳鳴りを引き起こす疾患には、突発性難聴、メニエール病、内耳性難聴などがある。
突然、片側の耳が聞こえなくなる突発性難聴は、ジーと蝉が鳴いているようなノイズが聞こえ、悪化すれば治療が困難になる。過剰なストレスがたたり、仕事で重責を負う人が重症化する場合が多い。休養を十分取れば改善される可能性が高い。
メニエール病は、内耳を満たしている内リンパ液が過剰になる内リンパ水腫によって発症する。難聴、耳鳴り、耳閉感(耳が詰まる感じ)などの聴覚症状やめまいを伴う。ザーッという低音が聞こえることから、男性の低い声が聞き取りにくいと訴える人もいる。ストレスに起因するため、精神的緊張を取り除く心理カウンセリング療法が有効とされる。
内耳性難聴は、内耳の発育不全や内耳炎などによって起きる感音難聴 (音を感じるが、聞きとれない難聴)だ 。過大な音響、抗がん剤や鎮痛剤、風疹や麻疹などの感染症、頭部外傷、遺伝子異常、加齢など様々な要因によって誘発する。
耳鳴りの治療法は?
これらの耳鳴りに有効な治療法はあるのだろうか?
たとえば、難聴と耳鳴りが合併している場合は、補聴器をつければ耳鳴が抑えられるケースがある。難聴は、外部の音が脳に入らない状態なので、補聴器をつけて外部の音が脳に届く状態を保てば、耳鳴りの優先度が下がるため、耳鳴りが意識に上りにくくなる。
また、TRT(Tinnitus Retraing Therapy/耳鳴り再訓練療法)は、耳鳴りがあっても、耳鳴りにストレスを感じない状態を習慣づけることによって、耳鳴りを意識に上りにくくする治療法だ。耳鳴りは危険な音ではないことを理解させるダイレクティブカウンセリングと、音響療法を組み合わせた治療を行なう。
音響療法は、サウンドジェネレーターや補聴器などを使用し、耳鳴りと耳鳴り以外の音を同時に聞くことによって、相対的に耳鳴りの音を下げるながら、耳鳴りの音から意識をそらす訓練を行なう。
この経験を繰り返せば、大脳皮質で耳鳴りの優先度が下がるので、大脳辺縁系や自律神経の刺激が抑制され、耳鳴りの悪循環のサイクルが断たれることにつながる。その他、高度な難聴を伴う耳鳴りは、人工内耳を埋込む手術によっておよそ80%の人の耳鳴りが軽減したという報告もある。
加齢によって聴力が低下し、聞こえにくくなった周波数の音が耳鳴りとして聞こえる場合がある。生命に危険を及ぼさないが、神経質になるとストレスが強まる。春先、天候不順とともにやってきた耳鳴りの中にも思いがけない疾患が隠れていることがある。
電話の受話音や会話が聞き取りにくく感じたり、耳鳴りがいつまでも治まらないなどの症状が続くなら、耳鼻咽喉科や脳神経外科などを必ず受診してほしい。
(文=編集部)