業者からの圧力によって使用が再び許可された
使用を許可した理由は、とんでもないものだった。いわく「ラットに胃がんができたのは事実だが、ラットには前胃と後胃の2つあり、がんができたのは前胃だけだった。ヒトには胃が1つしかないから問題はない」とのこと。
厚生省がBHAの使用中止を取り消したのは、それを使用禁止にすると、パーム油など輸入できなくなってしまう業者からの圧力があったからだ。ペットフードは食品衛生法も飼料安全法も対象外なので、使用量も制限がない。
船で長期間かけて輸入されるペットフードの原料には、相当な量の防腐剤が添加されている。犬などの小動物が悪影響を受けるのは必定だ。
ペットフード輸入業者が言う「食品添加物として許可されているのだから安全だろう」とは、食品添加物を多用する加工食品メーカーが、いつも主張していることだ。しかし、このBHAの例を見ても明らかだが、国が認めているから安全ということはない。
ズルチン(人工甘味料)、チクロ(人工甘味料)、サリチル酸(防腐剤)、AF2(殺菌剤、アクリル酸アミド)、アカネ色素(着色料)、コウジ酸(酸味料)……と、発がん性や遺伝毒性が確認されて使用中止になった添加物は少なくない。
使用許可と取り消しを繰り返しているのが、食品添加物行政の実態なのだ。
ペットフードは人間の食べ物より100倍も危険!?
このように安全性に不安のある食品添加物が、輸入ペットフードには多量に使われている。
BHTもその一つだ。BHTはもともと、ガソリンや石油製品の酸化防止剤として開発された酸化防止剤である。食品添加物としては、食用油脂、バター、魚介乾製品、魚介塩漬け、ガムなどに使われる。
ラットによる実験では、BHTによって、血清コレステロールレベルの上昇、肝臓障害、腎臓障害、脱毛が見られたほか、無眼症の仔も生まれている。また、犬を使った実験では、1kg当たり1.4~4.7kg与えると下痢が見られたとの報告がある。
BHTの食品添加物としての使用基準は、①魚介冷凍の浸透液1kgにつき1g以下、②油脂、バター、魚介乾製品、魚介塩蔵品、乾燥裏ごし芋は1kgにつき0.2g以下、③チューインガムは1kgにつき0.75以下と食品衛生法で定められている。
しかし、食品衛生法が適用されていないペットフードには無制限に使用できる。
エトキシキンは、防腐力が高く価格が非常に安い合成抗酸化剤で、ペットフードの原料となる飼料に大量に添加されている。かつてベトナム戦争で使われた枯れ葉剤の酸化防止剤としても使われた。
食品添加物ではないので食品に添加はできないが、十数年前には、エトキシキンが含有している健康食品が輸入され、大きな問題になった。エトキシキンはアレルギー、皮膚病、内蔵障害、発がんの原因になる。
1997年にFDA(米食品医薬品)獣医医療センターは、製造企業(モンサント社など)とペットフード産業に対して、ドッグフードへの使用をこれまでの半分に減らすように要求した。これにより、エトキシキンの許容残留値は、ドッグフードで75ppm、キャットフードで150ppmとなった。
しかし、この数値は、食品と比べると驚きだ。食品衛生法でエトキシキンの食品中の許容残留値は1ppmと定められている。ヒトより小動物のほうが合成化学物質の影響を受けやすいのに、100倍以上も緩くなっているわけだ。ペットに異常が起こるのは当然だ。
ペットが病気になったときの治療費の高さを考慮すれば……
数年前には、米国で中国製「ジャーキー」を食べた犬が2000匹近く死亡した事故がありた。多量の防腐剤を摂取したことが原因と指摘されている。
エトキシキンなどの防腐・酸化防止剤は、原料中に添加されているので製品に表示されない。しかし、輸入ペットフードには100%、BHA、BHT、エトキシキンが添加されている。また、飼料用原料を使っていれば、国産のペットフードにも間違いなくエトキシキンを含有している。
もちろん、飼料用原料を使わないペットフードなら、防腐剤・酸化防止剤を使っていないので安心できるが、価格がどうしても高くなる。ペットが病気になったときの治療費の高さを考慮すれば高いとは思えないが、なかなかそうもいかない。
筆者も20年一緒に暮らした愛犬がいた(現在は東日本大震災で引き取った5歳の雌犬がいる)。餌は手作り中心で、週に1〜2度、栄養補給で無添加の国産ペットフードを少し与えていた。現在も基本的には同じだ。