連載11回 目に見えない食品添加物のすべて

添加物まみれとなった日本の食文化を変えるのは家庭? 食品メーカー?

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家庭料理のよさをもう一度見直したい

 数多くの添加物を駆使して作られる食品。その中にはリスクが指摘されている物質も含まれているし、その総量は今までだれも経験したことがない。
 
「おかあさんのおにぎりよりコンビニのおにぎりのほうがおいしい」そう口にする子どもも増えていると聞く。添加物まみれの食品でつくる「家庭料理」に子どもの舌が慣らされてしまっているからだ。

食の乱れは国の乱れ

いま、日本の食卓が壊れはじめている。食の乱れは食卓の乱れ。食卓の乱れは家庭の乱れ。家庭の乱れは社会の乱れ。社会の乱れは国の乱れ。いまの食卓は市販のコロッケや出来合いの惣菜を並べるだけがあたりまえになっている。スパゲティをゆでて、缶詰のミートソースをかけるのも同じだ。
 
もちろん、出来合いの惣菜を出すのもたまには仕方がない。ただ、家庭料理の基本は加工度のなるべく低いものを買ってきて、それを調理するということにあるはずだ。
 
安易に加工食品に頼ってしまうことの危険性は、味覚の問題だけではない。加工食品は子どもたちに食べ物とは簡単に手に入るものだと思わせてしまう。食べたいときに食べたいものが簡単に手に入る。これでは食に対する「感謝」の気持ちなど生まれるはずがない。

メーカーに望む

 添加物を使えばおもしろいようにごまかしがきく。値段も安く抑えることができ、コンスタントに一定水準のものを楽につくることができる。しかもきちんと法律にのっとった基準を満たし、違法でもなんでもない。しかし、考えてみてほしい。そんなふうにして作ったものを自分の年老いた両親に、あるいは初めての子どもの離乳食に自信を持って食べさせることができるだろうか。
 
添加物を使うものと使わないもの。その違いをきちんとわかりやすく説明すればわかってくれる消費者は必ずいるはずだ。
 
 無添加でつくるとなると、当然、原材料はいいものを使わざるを得ないし、手間もかかる。値段は割高になるし、色や形も悪くなるかもしれない。味も薄くなり、添加物を使わないことによる物足りなさ、不便さが出るだろう。しかし、手間ひまをかけてまごころを込めておいしいものをつくっている・・・そのことを消費者に伝えるようにメーカーはきちんと説明すればいい。心ある消費者にはきっとそれが伝わるはずだ。

家族みんなで協力しよう

 料理を手づくりで、とひと口に言ってもやはりそれには時間や手間がかかる。その負担を女性にばかり押し付けてはいけない。いまや夫婦で働いている家庭は多いのだし、やはり男性も積極的に家事に参加しないと手づくりは実現できない。料理が苦手なら、掃除や洗濯など他の家事の手伝いでもいい。ときには妻から料理を教えてもらって料理づくりを楽しんでもいいだろう。子どもと一緒に料理を作る日があってもいい。「添加物をとってはいけない」などという高い使命感などはいらない。家族みんなで家事を分担して楽しめば、添加物はおのずと家庭に入り込まない。

 私たちのまわりには本当に多くの食べ物が氾濫している。売り場は迷うほどに多種多様の食品が並び、栄養成分を強調した情報もあふれている。節約、倹約、我慢。食料と資源の身の丈に合った分相応の暮らし。こんな言葉は死語になったように思える。

 私たちにとっての本当の「食の豊かさ」とはいったい何なのか、いったい誰のための食品添加物なのか。ここでぜひ、もう一度あらためて考え直してみてほしい。(終)


連載「目に見えない食品添加物のすべて」バックナンバー

安部司(あべ・つかさ)

食品添加物評論家。1951年、福岡県生まれ。総合商社食品課に勤務後、無添加食品の開発・推進、伝統食品や有機農産物の販売促進などに携わり、現在に至る。熊本県有機農業研究会JAS判定員。経済産業省水質第1種公害防止管理者。工業所有権 食品製造特許4件取得。食品添加物の現状、食生活の危機を訴え続けている。主な著書にベストセラーとなった『食品の裏側』(東洋経済新報社)、『なにを食べたらいいの?』(新潮社)、『「安心な食品」の見分け方 どっちがいいか、徹底ガイド』(祥伝社)などがある。

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