米国で乳房を喪失する女性が急増しているのはなぜ?
2016年2月22日付けの『HealthDay News』によれば、米国保健社会福祉省に属する米国医療研究・品質調査機構(AHRQ)が総人口の約25%に当たる13州の患者データを分析した結果、米国で乳房切除術を選ぶ女性が急増していることが明らかになった。
米国の乳がんの発症率は横ばいだが、乳房切除術を受けた女性は、2005年から2013年までの9年間で36%(10万人当たり66人から90人)も増加。両側切除は10万人当たり9人から30人と3倍以上も急増し、2013年には全体の3分の1を占めている。
両側切除する平均年齢の低下も著しい。2013年に片側切除した女性は61歳だったが、両側切除した女性は51歳と10歳も若かった。
また、乳がんに罹っていなくても、ジョリーさんのように遺伝的リスクのある女性は罹患を予防するために両側切除する女性も多く、10万人当たり2人から4人以上に倍増している。
米国で「乳房喪失」に走る女性が増えたのはなぜか?
レノックス・ヒル病院(ニューヨーク市)のステファニー・バーニック氏は、「乳房を切除した患者と乳房を温存した患者の生存率は変わらない。いずれにしても、がんの発生リスクやがん遺伝子の保有リスクを特定する遺伝子スクリーニングの普及や再建治療技術の向上に加え、がんのない側の乳がんの発症リスクを抑えたい女性心理が強く働いている」と説明する。
米国ウィンスロップ大学病院ブレスト・ヘルスセンターのフランク・モンテレオーネ氏は、「必ずしも乳房切除の必要がなくても、何度もマンモグラフィや生検を受けるたびに不安に襲われるならば、切除するほうがよいと考える女性が多いからではないか」述べている。
乳がんに襲われる日本人女性は12人に1人
ちなみに、2010年の国立がん研究センターがん対策情報センターのデータによれば、生涯に乳がんに罹る日本人女性は12人に1人。乳がんで亡くなる女性は、2013年に1万3000人を超え、1980年と比べて約3倍も増加している。厚生労働省の「2015年人口動態統計」によると、乳がんの死亡数は1万3240人だった。
また、日本乳癌学会の「2007年全国乳がん患者登録調査報告」によれば、乳房温存術は乳がん患者の約6割を対象に実施され、多くの女性に希望をもたらしている。
乳房は女性の魅力そのもの、母性の尊いシンボルだ。乳がん撲滅の道のりは遠いが、挑戦し続けなければならない。
(文=編集部)