どのくらいの人が応急措置ができるか?
皆さんは、倒れた人を前に、適切な手当てができるでしょうか。もちろん、救急隊、看護師、医師のような専門職者ではありませんので、突然目の前の人が倒れたら誰でも動揺してしまいます。
私は一昨年に、ある大学の学生たち(医療系の学生ではありません)に、「目の前で人が倒れたことがあったか」と調査をしました。すると、22.6%の人が「あった」と回答しました。
さらに、その時、「救護をしたか」と尋ねたところ、「救護した」と答えた人は39.1%でした。「救護しなかった」と答えた人の多くは、「したかったけれど、怖くてできなかった」と回答していました。39%という数字は、現在の日本の現状をよく反映しています。
先の総務省の統計によると、搬送されたすべての心肺停止者のうち、応急手当が実施されていた人の割合は43.0%(平成23年)だからです。
かつて、ある先生が、心肺停止状熊に陥った人の家族に対して、「家族が倒れた時に心臓マッサージをしたか」というアンケート調査を実施したところ、心臓マッサージをしたのは26%でした。家族が倒れた時でも、適切な応急手当をしていない現状もあるのです。
国民の力が徐々に強くなる
助けたいけれど怖くて応急手当てができない。これが多くの人の本音だと思います。しかし、年々、勇気を出して応急手当てをしてくださる人は増えています。心肺停止の人が目の前にいる時は、まず通報(119番)することが大事ですが、救急隊到着までの間に胸を押せば良いのです(胸骨圧迫心臓マッサージ、1分間に100回のペース)。
AED(自動体外式除細助器)は現在、多くの公共施設などに設置されていますが、心肺停止になった大に対して早期に作動することで、心室細動という致命的な不整脈から救うことができます。ADEを一般の人が使用した例は、平成17年は92件でしたが、平成23年には1433件になりました。
国民に啓蒙を
たとえば、事件が発生した場合。犯人逮捕のために、ビラをまいたり、報道によって情報提供を呼び掛けるなどの地道な啓蒙活助は重要です。それと同じように、「人の命を助けるためには国民の力が必要です」というような啓蒙活動も行われることを願います。
米国の学校では、地城の救急関連諸機関との連携を考慮した緊急事熊の行動計画が策定されています。そこには、学校内で心肺蘇生の訓練を行うことを含まれています。冒頭でお話ししたように、国民ひとりひとりの意識高揚はもちろんのこと、救命のために地域と連携する必要があると思います。
先日、私が娘を連れてスポーツ観戦に行った時、会場の片隅で日本赤十字社の方が救命法(心臓マッサージ)を啓蒙していました。このような地道な地域連携こそが重要だと痛感しました。私はその場で、娘に救命法を学ばせました。私の命を救ってもらうために……。