AEDが搭載されたドローンshutterstock.com
遠隔操作やコンピュータ制御で飛行するドローン(小型無人飛行機)。この「働きバチ」が火をつけた「ドローン革命」が世界中に飛び火している。軍事、農薬散布、インフラ監視、警備、消防、防災、物流、広告、エンターテインメント、ドローン特区など、さまざまなビジネスへの応用や、社会インフラとしての活用が、にわかに熱を帯びてきた。
今年1月、アメリカ・ホワイトハウスのセキュリティ網をかいくぐって大騒ぎになったドローン。日本でも、4月に首相官邸の屋上でドローンが発見された。5月には、浅草の三社祭でドローンを飛ばすと予告する動画を配信した15歳の少年が逮捕され、保護観察を受けることになった。
何かと話題に事欠かないドローン。ドローンの法規制はどうなるのか? 国土交通省、総務省、経済産業省の省庁間のコンセンサス形成は、進んでいるのか? 医療分野や救急医療への応用は、どこまで可能なのか?
心停止した人は約13万人、救命率は7.27%!
総務省消防庁の消防白書2014年版によれば、救急車が現場に到着するまでに平均8分30秒、病院収容までに平均39分18秒(現場到着時間を含む)の時間がかかっている。
2012年の1年間に全国の救急隊員が搬送した心停止の人は約13万人。そのうち心室細動という不整脈が原因で心停止した人は7万3023人。家族やたまたま近くに居合わせた人が目の前でバタッと倒れるところを目撃したり、倒れる音を聞いたりした人は2万3797人。心臓の鼓動を取り戻し、元通りの生活を送れるように復帰した人は1710人。救命率は7.27%だ。
心臓の鼓動と呼吸が停止すると体内の臓器や組織への酸素供給が止まるため、脳への血流がとだえてしまい、数秒で意識を失う。心停止直後の数分間は蘇生する可能性があるが、心停止5分以上で脳障害が起きるリスクが高まり、10分以上なら死に至る。
心停止後は、時間がたつほど蘇生の可能性は低くなり、蘇生しても脳障害が残る。心停止によって死に瀕した人を救うためには、時間、心肺蘇生、AED(自動体外式除細動器)が最重要になる。
AED搭載のドローンで心停止の人を救えないか?
心停止から蘇生まで、残された時間はわずか5~10分。目の前で倒れている人が呼吸していなければ、救急車が到着するまでに一刻も早く心肺蘇生を始めなければならない。心肺蘇生は、人工呼吸(マウスツーマウス法)で肺に酸素を送り、胸部圧迫して心臓から血液を送り出しながら、脳に酸素を循環させる。
もし、目撃現場の近くに、心電図を自動的に解析し、必要に応じて電気ショック(除細動)を心臓に与えられるAEDがあればどうだろう? 救急隊は必ずAEDを持っているが、救急隊の到着を待っている余裕はない。
2012年の調査によれば、一般人がAEDを使った時の救命率は36%。救急隊がAEDを使った時の救命率は17.9%。一般人がAEDを使うと、救命率は救急隊より2倍も高い。応急手当をしない時と比べると、救命率は8倍に跳ね上がる。ただ、一般人のAEDの使用回数は約1800回、心停止した人は7万3023人。AEDが使われる回数は、まだまだ少ない。
AEDは、心停止した人の胸に貼ったパッドから自動的に心臓の状態を判断し、心室細動や無脈性心室頻拍の不整脈を判断して、電気ショック(除細動)を心臓に与えて、心停止した人を蘇生させる。
AEDを搭載したドローンなら、現場に迅速に出動できるので、救命率を高められるないか? そんな奇抜な着想から、さまざまなプロジェクトや救急救命士のアクションが始まっている。次回は、AED搭載の救急救命ドローンの事例について紹介する。
(文=編集部)